近郊形電車

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211系

近郊形電車(きんこうがたでんしゃ)とは、概ね大都市から50 - 200km前後の中距離電車向けの車両に対する呼称である。

本項では特に断り書きがない限り、その他の鉄道車両も含め、日本の近郊形車両について記述する。

目次

概要

標準的な近郊形電車の車内(415系電車・3扉セミクロスシート)

元来は日本国有鉄道(国鉄)の電車の用途による区分の一つであり、長距離客向けに座席数をある程度確保しつつ、乗降に要する時間を短縮するために出入口を片側3箇所に配置した仕様の車両をこのように区分していた。中距離通勤輸送やインターアーバン的な都市間輸送に適した車内設備と性能を持った電車といえる。

車体の構造としては、片側3箇所にドアを設けて、ドア付近には2 - 3人掛けのロングシート(横向きシート)を設け、ドア間にはクロスシート(ボックスシート)を設けるのが基本的な構成である(以下、本項ではこのような座席配置を「セミクロスシート」と記述する)。ラッシュ時における乗客の乗降しやすさと、昼間時の居住性を両立するためにこの構造が考え出されたもので、「通勤形電車」と「急行形車両」の中間的な構造といえる[1]。そのため、従来の車両に比べてシートピッチ(座席の前後の配置間隔)と座席の横幅を狭くして、通路の面積を広くとっている。

これらの車両は、東京・大阪の大都市圏中距離電車(大阪圏の快速に相当する列車)といわれる、拠点駅から50 - 200km程度の範囲での運用が多いが、地方都市圏では都市間を結ぶ普通列車に充当されるケースが多い。これは、通勤形電車では駅間が長距離となり、居住性が確保しづらいことと、電車化する際に新車を製造する先を東京・大阪の大都市圏に行い、その際に比較的状態がよい車両を地方に持っていくという方式が多かったためである。

現在では扉数は3箇所とは限らず、座席も様々である(後述の「実情に合わせた変化」・「分割民営化後」も参照)。

その他の鉄道車両では、気動車については日本ではキハ45系は通勤形と一般形[2]の中間に位置づけられたことから近郊形に分類される[3]。また、キハ47形についてもこの概念を採用している[4]。なお、日本の客車には近郊形に分類される車両は製作されていない。50系は車内設備こそセミクロスシートであるが、主目的が通勤輸送であり、通勤形でも近郊形でもないことから一般形に分類されている[5]

日本国有鉄道・JRの近郊形車両

定義

国鉄での定義では「客室に出入口を有し、横型(ロングシート)及び縦型腰掛(クロスシート)を備え、都市近郊の運用に適した性能を有する車両形式のもの」が近郊形に定義される[6]

鉄道車両の形式は新性能電車については、車両形式区分の第2位(十の位)の数字が原則として「1~2」が近郊形に割り当てられ、「0」は通勤形とされていたが、401・403系については例外的に使用された[7]。民営化後は四国旅客鉄道(JR四国)を除いて国鉄時代の区分を踏襲したが、西日本旅客鉄道(JR西日本)では2005年(平成17年)度以降に新製された普通列車用の車両については車両形式区分の第2位(十の位)の数字を通勤形・近郊形・一般形を問わず「0~3、5、6」に割り当てているが、2012年(平成24年)時点では521系225系のみの使用に留まっている[8]

歴史

基本構成の確立

国鉄でこのタイプの車体を最初に採用したのは、1935年製のモハ51形である。従来の2扉クロスシート車と3扉ロングシート車の長所を併せ持つ形式として製造された。戦時色が濃くなると、これらは全てロングシートに改造されていったが、戦後の混乱が落ち着いてくると徐々にセミクロスシートに復元される車も現れ、モハ51の戦後版ともいえる70系1951年に登場すると、このタイプの電車は、都市近郊輸送の主役となっていった。

1961年には常磐線鹿児島本線電化用に401・421系が登場し、それまで片開きであった扉を両開きとして、現在に連なる近郊形電車の基本的フォーマットを確立した。また、この形式は当初「半通勤形」や「交直流形」と言う表現が用いられており、翌1962年にはその直流版である111系が横須賀線に登場するが、その際には70系と構造が似ていたことから「新スカ形」とも呼ばれていた。しかし1962年の夏頃からは近郊形という表現が使われはじめ、同電車の説明書(1962年8月)では正式に「近郊形電車」という表現が使われている。その後1963年からは111系に高出力電動機を採用した115系113系などが登場している。

これらの近郊形電車はおよそ20年間にわたって基本設計を変えることなく、標準系列としてマイナーチェンジを繰り返しながら製造され続けた。

実情に合わせた変化

キハ45系
117系車内
(2扉転換クロスシート)

しかし、この基本構成はもともと大都市近郊の事情に合わせたものであり、電車運転線区の拡大に伴い実情に合わなくなってくるケースが見られ、概ね1970年代末頃からはそれまでの全国一律の統一的仕様ではなく、基本的な設計思想は引き継ぎながらも使用地域の輸送事情に適合させる例が登場する。

気動車では普通列車用については通勤形とされたキハ35系を除いて一般形という概念が与えられ、近郊形は製作されなかったが、1966年に登場したキハ45系については地方都市での普通列車に使用される前提で両開き2扉セクロスシートという構造が採用され、近郊形に分類された。地方都市向け近郊形車両の標準形として確立し、その後製作されたキハ47形・417系713系413系・717系にも受け継がれたが、その後は国鉄財政事情の悪化が進み、地方都市向け電車の多くを特急・急行形電車の改造・転用で賄うこととなったため、結果的にこの仕様の車両は少数の製造にとどまっている(次項「#他用途の車両からの転用」を参照)。

1967年に登場した711系では、北海道の苛酷な気象条件を考慮し、近郊形電車ながら前後2扉、デッキ付きで座席は戸袋部分を除きクロスシートとなった。また、シートピッチを急行形と同一とし、洗面所を備えるなど、急行列車への使用も視野にいれていた。しかしこれは特殊な例であり、他地域ではこれ以降も引き続き113系・115系や415系などの標準仕様車両が投入されている。

並行私鉄との激しい競争にさらされていた関西地区では、1979年新快速用として117系が投入された。この車両は、並行私鉄の特急車両が転換クロスシート装備であり、それまで新快速に使用されていた153系のボックスシートでは見劣りがするため、2扉車体に転換クロスシートを装備した仕様を採用したもので、ロングシートは全くなかった。なお、117系はその後、中京地区にも快速用として増備車が投入されている。

一方、関東地区では、郊外の住宅地の拡大により増え続ける乗客を捌くため、1982年には415系普通車すべての座席をロングシートとした車両が製造された。また、1985年には415系で、セミクロスシートの車端部をロングシートとした車両も登場している。この仕様は、国鉄分割民営化を視野に入れた新型車両である211系でも採用された。

このほか、1982年には使用線区を飯田線に特化し、同線の事情に合わせて設計された119系が、四国島内の電化が実施された1986年には四国島内向けの121系が、瀬戸大橋線開業が間近となった1987年には同線向けに117系に準じた2扉車体・全席転換クロスシートの213系が、それぞれ製造されている。

他用途の車両からの転用

国鉄末期に設備投資が抑制されていた時代には、余剰となった他の用途向けの車両を近郊形に改造する工事も行なわれている。

1984年に、当時東北上越新幹線の開業により余剰となった特急形寝台電車581・583系を近郊形に改造し、419系・715系が登場した。この車両は、2扉セミクロスシートという状態にはなっていたものの、特急形車両時代の客用扉はそのまま流用、洗面台のあった部分も完全に撤去するわけではなくカバーをかけただけと、最小限の改造だけで使用されることになった。

特急への格上げにより余剰となった交直流急行形電車についても、交流電化区間の機関車牽引の客車列車を電車に置き換えるため、転用するための改造が行なわれている。改造内容は、急行形車両では1m幅の客用扉が2つあったため、車両の出入口付近をロングシート化したり、出入台との仕切扉を撤去するなどの小規模な改造を施工した。これらの改造は「近郊形化改造」とも呼ばれた。一部では、417系と同等の車体へ載せ替えも実施されたが、少数にとどまっている[9]

国鉄最末期の1986年には、郵便・荷物列車の廃止に伴い余剰となった郵便荷物用電車を改造したクモハ123形も登場している。郵便荷物用電車は単行(1両)運転が可能であり、この特性を生かして閑散路線における合理化を図り、ワンマン運転も可能な車両として改造された。

分割民営化後

国鉄分割民営化後は、近郊形車両はそれまで以上に地域ごとの実情が反映されるようになった。

ラッシュ時の混雑緩和が主要命題となった東日本旅客鉄道(JR東日本)の東京圏では、全ての座席が通勤形電車と同様のロングシートとなり、収容力を増大させた車両が増加した。同社においてはこの考え方がさらに進み、1994年に登場したE217系では混雑緩和を最優先し、通勤形電車と同様の片側4扉の車体が採用されるとともに、普通車は一部の車両がセミクロスシートである他は全席ロングシートの車両となり、車体の面では通勤形電車とほとんど差がなくなった。さらに、2000年に登場した後継車E231系以降は、近郊形電車と通勤形電車を統合した一般形電車となり[10]、一部セミクロスシート車を組み込んでいるか全車両ロングシート車であるか、またトイレの有無など、若干の仕様や性能の違い以外は基本的に同一の車両であり、近距離路線と中距離路線の双方に投入されている[11]

一方、JR東日本を除くJR各社では、大都市圏を中心に、3扉車体で転換クロスシートという国鉄時代には採用されていなかった新しいレイアウトを持つ車両が登場した。その先駆者として1988年に北海道旅客鉄道(JR北海道)において721系が製造され、翌1989年にはJR西日本の221系、JR東海の311系九州旅客鉄道(JR九州)の811系が製造された。その後もJR西日本の223系、JR九州の813系、JR四国の6000系、JR東海の313系など、同様の接客設備を持つ車両が製造されている。また、113系などの既存の車両が、これらの車両と同様のレイアウトにリニューアル改造されるケースも発生している。

地方都市圏では、JR九州の815系やJR東海の313系2000番台など、車両を3扉ロングシートで増備したケースが見られる一方、JR九州の817系、JR西日本の521系および223系5500番台のように転換クロスシート車が導入されたケースも見られる。JR四国においては、クロスシートとロングシートの配置を工夫し、適度な収容力を確保した7000系を1990年に登場させている。これらの車両は1両または2両で運転可能なワンマン運転対応車両となっているものがほとんどである。

気動車では3ドア近郊形電車と同等の性能・車内設備を持つ車両も製作されている。JR東海のキハ75形やJR九州のキハ200系などが挙げられる。

私鉄における事例

東武6050系

私鉄においては、長距離列車を運行していたり観光路線を持つところでは近郊形に相当する車両を保有している場合がある。

2ドア車においては大手私鉄では東武鉄道6050系西武鉄道4000系を保有しているが、いずれも長距離の無料速達列車への運用を視野に入れたものである。地方私鉄や第3セクター鉄道では富士急行では5000形阿武隈急行では8100系とJR東日本から417系を譲り受けたA417系を保有しているが、こちらは地域輸送を視野に入れたものである。

3ドア車においては地方私鉄や第3セクター鉄道では愛知環状鉄道がJR東海313系をベースにした2000系を保有している。過去には100系を保有していたが、そちらについてはえちぜん鉄道に譲渡され、現在はMC6001形・MC6101形として使用されている。富士急行では京王5000系を譲り受け、セミクロスシートに改造した1200形を保有している。他にも伊豆箱根鉄道が3ドアセミクロスシート車や転換クロスシート車を保有している他、過去には伊豆急行がJR東日本から113・115系を譲り受けた200系を保有していた。大手私鉄では近畿日本鉄道が3ドア転換クロスシートの5200系を保有しているが、無料急行列車への運用を視野に入れた車両であるため、使用列車による位置付けとしては急行形であるが[12]、近郊形の範疇に入ることもある。また、このスタイルはその後のJR東日本を除くJR各社の3ドア近郊形電車に影響を与えた。なお、近鉄では特急形車両と団体用車両を除く車両(いわゆる無料列車に充当される車両)を一般車両と呼称しているため、一般車両として扱われる[13]

脚注

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  1. ^ 性能的にも、高速性能と加減速性能を両立するため、電動車の歯車比は通勤形(5.60または6.07)と急行形(4.21) の中間の4.82とされている。ただし最近ではモーターの出力が大きくなったこともあり、通勤車と同じ歯車比を採用しているものもある。
  2. ^ 国鉄の定義では「客室に出入口を有し、横型(ロングシート)及び縦型腰掛(クロスシート)を備え、通勤輸送に適した性能を有する車両形式のもの」が一般形に定義されるが、キハ20系以前の普通列車用の気動車は便宜上一般形に分類され、通勤輸送に適した車両とは言いにくいところがある(これは一般形客車と称された10系以前の客車についても同様)。
  3. ^ JTBパブリッシング 石井幸孝『キハ47物語』 P97
  4. ^ JTBパブリッシング 石井幸孝『キハ47物語』 P117
  5. ^ 誠文堂新光社 岡田直明・谷雅夫『新版 国鉄客車・貨車ガイドブック』 P28、P48
  6. ^ ネコ・パブリッシング『JR全車輌ハンドブック2009』 P15
  7. ^ 両形式は411系・413系(471系・473系改造車とは別の車両)への形式変更も検討されたが、実現しなかった。
  8. ^ データで見るJR西日本 - 西日本旅客鉄道
  9. ^ 国鉄457系電車国鉄413系・717系電車の項も参照されたい。
  10. ^ JR東日本:車両図鑑>在来線 E231系
  11. ^ イカロス出版『E231/E233 Hyper Detail』P132
  12. ^ 近畿日本鉄道|鉄路の名優 5200系
  13. ^ 近畿日本鉄道|鉄路の名優

参考文献

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関連項目

今日は何の日(8月24日

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