通信プロトコル
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通信プロトコル(つうしんプロトコル、Communication protocol)は、通信に関する規格のことである。「通信規約」や「通信手順」ともいう[1]。
概要[編集]
通信を行うためには、通信に参加するもの同士の間で、あらかじめ通信に関する規格を定めなければならない。
たとえば、中世においては、丘の上で狼煙を上げ、それを複数の丘でリレーすることで通信を行っていたが、狼煙を上げるタイミングや意味について、事前に打ち合わせて決めておかなければ意味を成さない(例えば、敵が500人現れ危険な状況であれば黒い狼煙を2本あげる等)。
プロトコルを定め、それに従うことは、通信を成立させるための基本原理と言える。プロトコルが異なる機器同士で通信を行いたい場合は、プロトコルコンバータ(英語: Protocol converter)のような機器を使用する。
情報工学におけるプロトコル[編集]
一つの通信でも、役割の異なる複数のプロトコルから成り立っていることも多く、それらをまとめたものは「プロトコルスタック」、「プロトコル・ファミリー」、「プロトコル・スイート」などと呼ぶ。これは、ネットワーク・プロトコルが階層的に定義されているのに対応して、それを実装するソフトウェアも階層的に構築されるためである。また、このことからプロトコルや、プロトコル・スタックは、しばしばそれらのソフトウェアでの実装を指すこともある。
現在広く普及しているプロトコル・スイートとしては、インターネット・プロトコル・スイート(TCP/IP)が挙げられる。インターネットの通信に関するプロトコルは、コンピュータ上で動くソフトウェアに関する取り決めを中心に、伝送路などのハードウェアについての取り決めも含まれ、そのほとんどは、IETFによって定められ、その他のものについてはIEEEやISOなどの組織によって定められている。ITU-Tは電気通信に関するプロトコルの策定を行う。
構成要素[編集]
通信プロトコルは、伝送路の物理条件、伝達、相手の特定、情報表現の4つの基本要素より成り立っている。
- 伝送路の物理条件
- 有線通信の場合は、ケーブルとコネクタの形状と電気特性や光学波長、変調方式を規定する。無線通信の場合は、周波数帯や変調方式を規定する。例えば、IEEE 802.11, Bluetooth, ZigBeeなどがある。
- 伝達
- 伝達に関する要素として、通信プロトコルの中核をなす多くの決まりごとが規定されている。この中には信号にどのように「1」と「0」を割り当てるのかといった「符号化コード」から始まって、「同期」、「アクセス制御」、「誤り制御」、「フロー制御」などの各方式の規定が含まれている。
- 相手の特定
- 1対1の通信路に関するプロトコルでは例外的に規定の必要がないが、複数の端末が接続されるネットワーク上では送信先を特定する必要がある場合が多い。個別の「アドレス」によって特定できるが、1つの端末には、MACアドレスやIPアドレスのように用途によって複数種類のアドレスが割り振られることが多く、それらの間での変換ルールに関しての複雑な取り決めが規定されている。
- 情報表現
- ビットの羅列を有効な情報として通信するために、情報の表現ルールを相互に取り決める必要がある。ビットの区切り単位として古くは6ビットや7ビットで1つの文字を表現していたが、今では多くが8ビットで区切られたASCIIコードを文字コードとして使っていることが多く、日本ではシフトJIS等も使用される。また、いくつかの文字の組み合わせでコマンドとする取り決めや、送信する内容、つまりデータそのものの表現方法も取り決めておかなくてならない。こういった情報の配置と構成に関する表現ルールがパケット・フォーマットやフレーム・フォーマットといった形で、詳細な取り決めが規定される[2]。
各種プロトコル[編集]
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以下は各種の通信プロトコルについて、OSI参照モデルの7層のうち最も近い層に分類したものになっている。
第1層(物理{フィジカル}層)のプロトコル[編集]
- ISDN Integrated Services Digital Network
- 10Base-T、100BASE-TX、1000BASE-T(イーサネットで使用される物理層の仕様)
- PDH Plesiochronous Digital Hierarchy、SDH統一前の地域別同期網
- T-carrier (T1, T3 など)、ISDNの多重化
- RS-232C、EIA-574、シリアル・インタフェースで、当初はモデムやコンピュータ端末の接続のために開発された
- SDH Synchronous Digital Hierarchy、PDH後続の国際統一同期網
- SONET Synchronous Optical NETworking、SDHへと標準化前の規格
第2層(データリンク層)のプロトコル[編集]
- ARP Address Resolution Protocol
- イーサネット
- FDDI Fiber Distributed Data Interface
- LAP (Link Access Procedure) 、X.25用
- HDLC High Level Data Link Control
- PPP Point-to-point protocol
- トークンリング
第2+3層のプロトコル[編集]
第3層(ネットワーク層)のプロトコル[編集]
- ICMP Internet Control Message Protocol
- IP Internet Protocol そのもの
- IPX Internetwork Packet Exchange
- ルーティング・プロトコル:
- X.25PLP (Packet Level Protocol) 、X.25用
第3+4層のプロトコル[編集]
- XNS Xerox network services
第4層(トランスポート層)のプロトコル[編集]
- SPX Sequenced Packet Exchange
- TCP Transmission Control Protocol
- UDP User Datagram Protocol
- SSL Secure Sockets Layer
- TLS Transport Layer Security
- IPSec IP Security Protocol
第5層(セッション層)のプロトコル[編集]
- SIP Session Initiation Protocol
- H.323 Packet-based multimedia communications systems
- HTTP HyperText Transfer Protocol、 World Wide Webで利用されている
- SMTP Simple Mail Transfer Protocol
- FTP File Transfer Protocol
- POP3 Post Office Protocol Version 3
- Telnet 遠隔端末アクセスプロトコル
- IMAP Internet Message Access Protocol
HTTP over TLS(HTTPSなどで使われる)やSMTP over SSL、STARTTLSなど、上記のプロトコルにおけるセキュリティ上の欠点を補ったものもある。
第6層(プレゼンテーション層)のプロトコル[編集]
第7層(アプリケーション層)のプロトコル[編集]
- NFS Network File System
- SNMP Simple Network Management Protocol
- Gnutella ピア・ツー・ピアのファイル交換プロトコル
- DNS Domain Name System
- SSH Secure SHell
- NTP Network Time Protocol
- Gopher World wideな文書共有システム
- Finger 登録ユーザのプロファイル情報の取得
- NNTP News Network Transfer Protocol
- LDAP Lightweight Directory Access Protocol
- DHCP Dynamic Host Configuration Protocol
- IRC Internet Relay Chat
- WebDAV Web Distributed Authoring and Versioning
- DICT Dictionary protocol
歴史[編集]
通信に関して最初にProtocol(プロトコル)という用語が使われたのは、1968年に稼動を開始したARPANET(アーパネット)である。ARPANETは世界最初のコンピュータ・ネットワークとして、また、現在のインターネットの母体となったネットワークとして知られている。
その後、ARPANETを手本にさらに良いネットワークを構築するために生み出されたX.25という通信手順の登場で、プロトコルという用語が広まり定着した[2]。
応用[編集]
自動車[編集]
CAN(Controller Area Network),LIN(Local Interconnect Network), FlexRayのような車載機器の通信規格がある。
家電[編集]
Echonet, ECHONET Liteのような家電用通信規格がある。
機器[編集]
ARCNET(Attached Resource Computer NETwork)のような機器間の通信規約がある。
航空宇宙[編集]
SpaceWireのような航空宇宙用の通信規約がある。
仮想通貨[編集]
暗号通貨は多種多様に現存していて、トークンの特異性かつ暗号通貨間のチャネリング(交信)を指すことがある。
関連[編集]
プロトコル記述言語[編集]
出典[編集]
学習参考書[編集]
- 井上直也、村山公保、竹下隆史、荒井透、苅田幸雄:「マスタリングTCP/IP―入門編―(第6版)」、オーム社、ISBN 978-4-274-22447-8 (2019年12月)。