遺産相続 (映画)

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遺産相続
監督 降旗康男
脚本 松田寛夫
出演者 佐久間良子
小川真由美
宮崎萬純
清水美砂
野々村真
尾美としのり
風間杜夫
竜雷太
音楽 篠崎正嗣
撮影 木村大作
編集 荒木健夫
製作会社 東映京都撮影所
配給 東映
公開 日本の旗1990年10月20日 
上映時間 109分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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遺産相続』(いさんそうぞく)は、1990年日本映画。主演・佐久間良子、監督・降旗康男東映京都撮影所制作、東映配給。

概要[編集]

1989年の『社葬』が評価されヒットしたことを受け(配収6億円)製作された壮絶な遺産相続戦争を描いたブラックコメディ[1]

東映育ちの佐久間良子1968年の『大奥絵巻』以来(公開順)23年ぶりに東映映画に出演[2][3]。脚本も佐久間をイメージして書かれた[3]。佐久間は「今まで演じてきた役からは想像もつきません」と話し、気性が激しくしたたかな女性を力演した[3][4]

あらすじ[編集]

東京下町でマネキン人形を製造販売するセントラル工芸社長・藤島元春(竜雷太)が渓流釣りに出かけ岩場から転落して急死。当初2、3億円だろうとタカをくくられていた遺産は、会社資産を含め50億円と判明し事態は急展開。内縁の妻(佐久間良子)とその連れ子の長男(尾美としのり)、長女(宮崎萬純)、長男の嫁(清水美砂)、本妻(小川真由美)、実子(美加里)、愛人(宮下順子)、認知した実子・野々村真らが、遺産50億円をめぐり、会社売却、家庭崩壊へ、血みどろの争いを繰り広げる。

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

製作[編集]

企画は岡田茂東映社長[3]。自身が前年企画した『社葬』がヒットしたため[5]、「次は遺産相続だ」と『社葬』の路線を家庭内に移したものとして企画[3]。岡田自ら陣頭指揮を執り、映画が製作された[2]。当時、東映の映画をよく撮影していた木村大作は、岡田に「『遺産相続』より『破産宣告』の方がいいんじゃないでしょうか」と言ったら「それはいいかもしれないな」と本気で研究していたという[6]。降旗康男監督は「お金万能の世の中にお金に向かって突進していく話。しかし、最後にはお金で買えない何かを残す内容にしたい」と抱負を述べた[3]。大作映画では最も大きな役と思われる野々村真は降旗による抜擢[6]

評価[編集]

キネマ旬報』の平田純は、映画公開の前に本作の興行予想として「『社葬』が企業を題材にした映画であったため、配収には限界があり、伊丹十三の一連の作品のパターンをなぞったにしても、やはり社会現象化の一歩手前で、そこそこのヒットにとどまる運命にあったが『遺産相続』は『社葬』以上に観客の興味を集める可能性がある。"遺産相続"に対する覗き見的趣味は、明らかに『マルサの女』の"税金"に通じるものがあり、"ポスト伊丹映画"の一番手に位置する作品になるかもしれない」と期待を述べていたが[1]、ヒットせず[4]。平田は「会社側が観客の興味の対象にピタリと当てはまる伊丹十三的な映画を目指していたにもかかわらず、現場のスタッフたちが脚本化~映画化の段階で伊丹映画とは似て非なる内容に仕立ててしまった。"ポスト伊丹映画"という売りのパッケージを、映画そのものが裏切ることで、映画完成前の興行価値をも葬り去った。現場の映画製作が、会社企画の意図を見事に裏切っていきながらも、その映画作りを作品的な完成度に結実させることができなかった。しかしそれ以上に興味深いのが、まぎれもない失敗作である『遺産相続』の失敗の在り様が、まことに東映らしいということであった。作品的な完成度を目指すより、映画の混乱化、解体化を意図したかのような現場の意志も感じられ、こうした企画と現場の齟齬こそが、極めて東映という会社にふさわしいもののように見える。ここに映画製作のダイナミズムがある。他の映画会社でこのような映画製作がなされる例は皆無である。このことは逆説的にいえば、東映という会社には製作の活力がまだ残っているという証左であり、こうした現場の活力をも呑みこんだ会社サイドの企画力こそが、今後様々な形で模索されていかなくてはならない。ヒット作の形式を容易に追随するのではなく、現場の総意を重視した現実的なヒット作をモノにしなくてはならないだろう」などと評している[4]。当時、東宝松竹はほぼ自社製作をやめ、東映のみが自社製作を続けていた[7]

脚注[編集]

  1. ^ a b 「興行価値 日本映画 ポスト伊丹映画の可能性『遺産相続』~」、『キネマ旬報』1990年10月下旬号、キネマ旬報社、 154 - 155頁。
  2. ^ a b 「日本映画ニュース・スコープ」『キネマ旬報』1990年7月下旬号、137頁。
  3. ^ a b c d e f 「日本映画ニュース・スコープ 新作紹介」『キネマ旬報』1990年8月下旬号、161頁。
  4. ^ a b c 平田純「興行価値」『キネマ旬報』1990年12月上旬号、152頁。
  5. ^ 石坂昌三「『タスマニア物語』 降旗康男インタビュー」1990年7月上旬号、57頁。
  6. ^ a b 金澤誠 『誰かが行かねば、道はできないー木村大作と映画の映像』 キネマ旬報社、2009年、208 - 210頁。ISBN 9784873763132。
  7. ^ 「映画・トピック。ジャーナル」『キネマ旬報』1987年1月上旬号、179頁。