配当所得
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配当所得(はいとうしょとく)とは、所得税における課税所得の区分の一つであって、法人から受ける利益の配当、剰余金の分配、基金利息並びに投資信託及び特定目的信託の収益の分配に係る所得をいう(所得税法24条1項)。利子所得および不動産所得と同様、資産性所得の一つである。
課税方式[編集]
配当所得の金額 = 収入金額(源泉徴収税額を差し引く前の金額) ー 株式などを取得するための借入金の利子
配当所得は、所得税法上は特例を除き原則は総合課税である。そして利子所得と異なり、株式等を取得するための負債の利子について、一定の範囲で控除が認められる(所得税法24条2項)。ただし、赤字であっても、他の所得の金額から控除することはできない(損益通算できない)[1]。
租税特別措置法の規定により、源泉徴収20.42%(大口株主等以外の上場株式等は、15.315%と他に住民税5%)をされ、その上で上場株式等の配当等に対する課税の特例制度や少額配当等の申告不要制度が設けられている(源泉分離課税分を除く)。
上場株式等(大口株主等を除く)[編集]
上場株式等の配当等については、持株割合3%以上の大口株主等が受取るものを除き、申告不要を選択することができ(住民税も同様)、源泉徴収のみで納税が完了する。ただし、2010年分以後金融商品取引業者等で開設した特定口座(源泉徴収口座)内で、配当所得と損益通算した譲渡所得(損失)を申告する場合、その上場株式等の配当所得を申告不要にすることはできない。
2009年分から申告分離課税が加えられ、上場株式等の譲渡損失との損益通算が可能になった。その場合、上場株式等の配当等(申告不要分を除く)の全部について、確定申告にて申告分離課税を選択する必要がある。申告分離にする場合の課税配当所得等の金額に対する税率は源泉徴収税率と同一である。
2016年分から、上場株式等であっても特定上場株式等に該当しない配当等は総合課税を選択できない(利子所得の申告分離課税と合算化)。
2016年分から、所得税が総合課税、住民税が申告不要制度が適用できる(保険料額が住民税基準の所得となる国民健康保険などが有利となる場合がある)場合がある[2]。
所得税については、このような選択肢がある。税額を比較し、有利な方を確定申告の際に選択することが出来る。
- 申告分離課税もしくは確定申告不要
- 総合課税
- 所得税は総合課税の累進課税であるが、配当控除が適用されるため、課税される所得金額次第で、総合課税を選択した方が税率が低くなる。その際は、金融機関で源泉徴収されている場合でも、確定申告により、税額を調整(還付など)することが出来る。配当控除の金額の計算式はかなり複雑であり、詳細は国税庁のタックスアンサーを参照[6]。ここでは、課税総所得金額等が1000万円以下だけ記載する。
- 課税総所得金額等が1000万円以下の場合(パターン1)
- 配当控除が10%の場合、総合課税の税率が25.315%以下であれば、配当は総合課税を選んだ方が税率が安くなる。2020年4月現在の所得税の税率を使うと、課税される所得金額が1000万円の場合、税率は18.01%のため[7][8]、総合課税の方が税率が低い。なお、課税される所得金額というのは、各種控除(基礎控除や給与所得控除など)を引いた後の金額なので、手取り給与額よりも小さな金額である。
住民税については、このような選択肢がある。所得税とは異なる方式を選択できる。なお、配当所得は所得税の話であるが、関連するので本項でまとめて記載する。
- 申告分離課税もしくは確定申告不要
- 住民税は5%である。所得税の確定申告を行うと、自動的に住民税も確定申告される。
- 総合課税
所得税の確定申告で総合課税を選択した場合、何もしなければ住民税も総合課税となるが、書面を市区町村に提出することにより、所得税は総合課税だが、住民税は申告分離課税を選択することが出来る。提出すべき書面の名称は市区町村によって様々であるが、「特定配当等・特定株式等譲渡所得金額申告書」[11]など。この書面は eLTAX の対象外。
上場株式等以外(大口株主等を含む)[編集]
申告不要を選択したものを除き、総合課税である。
少額配当等の確定申告不要制度[編集]
内国法人から支払を受ける配当等で一回に支払を受ける金額が少額(年一回配当の場合は10万円以下)のものは、申告せずに源泉徴収で済ますことができる。(所得税法24、182、措置法8の2、8の5、9の3、平18改正所法附則77。) なお住民税には、上場株式等を除き少額配当等の申告不要がない。
源泉分離課税[編集]
私募公社債等運用投資信託及び特定目的信託は、源泉徴収のみで完結し、選択により確定申告へ含めることが出来ない。
少額投資非課税制度[編集]
2014年1月より「NISA」、2016年4月より「ジュニアNISA」、2018年1月「つみたてNISA」が始まった。
脚注[編集]
- ^ No.2250 損益通算|所得税|国税庁
- ^ 上場株式等の住民税の課税方式の実質見直し大和総研(2017年1月25日付)
- ^ a b No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度|国税庁
- ^ No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除|国税庁
- ^ No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか|国税庁
- ^ No.1250 配当所得があるとき(配当控除)|国税庁
- ^ No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁
- ^ (10000000 * 0.33 - 1536000) * 1.021 / 10000000 * 100 = 18.01044%
- ^ 税額控除の種類|江東区
- ^ 配当控除の計算方法について|藤沢市
- ^ 港区ホームページ/上場株式等の配当所得等及び譲渡所得等に係る住民税の課税方式の選択について(平成30年度改正)
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)|国税庁
- No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度|国税庁
- No.1250 配当所得があるとき(配当控除)|国税庁
- 法第24条《配当所得》関係|国税庁
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