論語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
儒家経典
五経
九経



儀礼/周礼
春秋
礼記
春秋左氏伝
春秋公羊伝
春秋穀梁伝
七経 十二経
論語
孝経
爾雅
十三経
孟子
邢昺『論語注疏』
何晏『論語集解』 学而
論語 衛霊公
論語 八佾
莫高窟出土の『論語』

論語』(ろんご、拼音: Lúnyǔ)とは、孔子と彼の高弟の言行を孔子の死後、弟子達が記録した書物である。『孟子』『大学』『中庸』と併せて朱子学における「四書」の1つに数えられる。

四書のひとつである『孟子』はその言行の主の名が書名であるが、『論語』の書名が(たとえば「孔子」でなく)『論語』であるその由来は明らかでない(『漢書』巻30芸文志[1]に「門人相與輯而論纂 故謂之 論語」と門人たちが書き付けていた孔子の言葉や問答を、孔子死後に取り集めて論纂し、そこで『論語』と題したとある)。

別名、「倫語(りんご)」、「輪語」、「円珠経(えんじゅきょう)」とも言う。これは、六朝時代の学者、皇侃(おうかん)の著作『論語義疏』によると、漢代の鄭玄(じょうげん)という学者が論語を以て世務を経綸することが出来る書物だと言った所から、「倫語」という語が出現し、又その説く所は円転極まりないこと車輪の如しというので、「輪語」というと注釈し、「円珠経」については鏡を引用して、鏡はいくら大きくても一面しか照らし出さないが、珠(玉)

は一寸四方の小さいものでも上下四方を照らすものであり、諸家の学説は鏡の如きもので一面しか照らさないが、論語は正に円通極まりないものである、という所から「円珠経」と言うと説かれている。

概要[編集]

『論語』は漢代には地方で伝承していた『魯論語』、地方で伝承していた『斉論語』、孔子の旧家の壁の中から発見された『古論語』の3派があった。編の数や順序もそれぞれで多少、異なっていたが、後漢末期に『魯論語』をもとにして現在の形にまとめられた。春秋末期の語法を残しているとの分析もあるが、平勢隆郎(古代中国史家)は、これを戦国時代に作られたとの見解を取っている。

『論語』は五経のうちには含まれないが、『孝経』と並んで古来必読の書物であった。『顔氏家訓』勉学篇では、乱世では貴族の地位など役に立たないが、『論語・孝経』を読んでいれば人を教えることができると言っている。宋学では『論語』を含む四書をテクストとして重視し、科挙の出題科目にもなった。『論語』は『論語集解』や『論語集注』など注釈書が多く存在。

ヨーロッパでは、中国大陸で布教活動を行っていたイエズス会宣教師により『大学』『中庸』と共にラテン語に翻訳され、17世紀フィリップ・クプレによって出版された。中国の哲学はシノワズリの一部としてヴォルテールシャルル・ド・モンテスキューケネーといった思想家らに大きな影響を与え、啓蒙思想の発展に寄与した。

構成[編集]

512の短文が全20篇で構成されている。篇の名称は各篇の最初の二文字(または三文字)を採ったものであり章によってはその章の内容のことをいう。前10篇を「上論」、後10篇を「下論」と呼んで区別したりもする。全10巻。

  • 学而第一(がくじ)
  • 為政第二(いせい)
  • 八佾第三(はちいつ)
  • 里仁第四(りじん)
  • 公冶長第五(こうやちょう)
  • 雍也第六(ようや)
  • 述而第七(じゅつじ)
  • 泰伯第八(たいはく)
  • 子罕第九(しかん)
  • 郷党第十(きょうとう)
  • 先進第十一(せんしん)
  • 顔淵第十二(がんえん)
  • 子路第十三(しろ)
  • 憲問第十四(けんもん)
  • 衛霊公第十五(えいれいこう)
  • 季氏第十六(きし)
  • 陽貨第十七(ようか)
  • 微子第十八(びし)
  • 子張第十九(しちょう)
  • 堯曰第二十(ぎょうえつ)

論語は学問に関する章が多く取り上げられており、学以外にも社会秩序などにかんする内容も取り上げられている。

注釈書[編集]

漢代には既に、馬融鄭玄などが『論語』に注しているが、現存最古のものは何晏がまとめた『論語集解』(古注)である。 『論語集解』の編者は何晏がしたとされているが、その列伝に『三国志』巻九には編纂したことは書かれておらずどこまで何晏の解釈か難しい。 南宋の朱熹は、独自の立場から注釈を作り『論語集注』(新注)としてまとめた。江戸時代以降の日本でももっぱら新注が用いられたが、朱子学の論語解釈を批判する形での論考に、伊藤仁斎『論語古義』、荻生徂徠『論語徴』がある。中国の注釈書は基本的に最初に注釈を加えられたものを古注といい、後世に改めて注釈を加えられたものを新注という。

刊行文献[編集]

校訂訳注[編集]

  • 荻生徂徠『論語徴 1』小川環樹訳注、平凡社〈平凡社東洋文庫 575〉、1994年3月。ISBN 4-582-80575-2。
  • 荻生徂徠『論語徴 2』小川環樹訳注、平凡社〈平凡社東洋文庫 576〉、1994年4月。ISBN 4-582-80576-0。
  • 朱熹 『論語集注』 土田健次郎訳注、平凡社東洋文庫(全4巻)、2013-2015年
  • 朱熹『四書章句集注』〈新編諸子集成〉、中華書局、2006年。ISBN 9787101081695。

解説文献[編集]

  • 荒川健作『論語大成 全訳 最高の徳「中庸」とは何か?』三恵社、2007年6月。ISBN 978-4-88361-552-0。
  • 狩野直禎図解雑学 論語』ナツメ社、2001年7月。ISBN 4-8163-3046-1。
  • 加地伸行『「論語」再説』中央公論新社〈中公文庫〉、2009年3月。ISBN 978-4-12-205136-2。
  • 簡野道明『補註 論語集註』明治書院、2003年2月。ISBN 4-625-73301-4。新版再刊
  • 武内義雄『論語之研究』岩波書店、1939年。
    • 武内義雄『武内義雄全集 第1巻』角川書店、1978年7月。
  • 陳舜臣『論語抄』中央公論新社〈中公文庫〉、2009年8月。ISBN 978-4-12-205189-8。
  • 津田左右吉『論語と孔子の思想』岩波書店、1946年。
    • 津田左右吉『津田左右吉全集 第14巻』岩波書店、1987年10月。ISBN 978-4-00-091124-5。
  • 橋本秀美『論語 心の鏡』岩波書店〈書物誕生-あたらしい古典入門〉、2009年9月。ISBN 978-4-00-028294-9。
  • 緑川佑介『孔子の一生と論語』明治書院、2007年2月。ISBN 978-4-625-68403-6。 - 総ルビ付き。
  • 宮崎市定『論語の新しい読み方』礪波護編、岩波書店〈岩波現代文庫〉、2000年7月。ISBN 4-00-600022-7。新版再刊
    • 宮崎市定『論語の新研究 宮崎市定全集 第4巻』岩波書店、2000年9月。ISBN 4-00-091674-2。
  • 安岡正篤『論語に学ぶ』PHP研究所〈PHP文庫〉、2002年10月。ISBN 4-569-57813-6。新版再刊
  • 吉川幸次郎『「論語」の話』筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2008年1月。ISBN 978-4-480-09121-5。新版再刊
  • 呉智英『現代人の論語』筑摩書房〈ちくま文庫〉、2015年8月。ISBN 978-4-480-43254-4。新版再刊
  • 井波律子『完訳論語』岩波書店、2016年6月。ISBN 978-4-00-061116-9。
  • 『論語 現代語訳』齋藤孝訳、筑摩書房ちくま新書〉、2010年12月。ISBN 978-4-480-06578-0。
    • 『論語』齋藤孝訳、筑摩書房〈ちくま文庫〉、2016年10月
  • 『論語 現代訳』下村湖人訳、PHP研究所(選書判)、2008年10月。ISBN 978-4-569-70314-5。 新版再刊、現代語訳のみ。
  • 『論語 朱熹の本文訳と別解』石本道明、青木洋司著 明徳出版社 2017年12月

[編集]

  1. ^ Wikisource reference 班固. 漢書/卷030. - ウィキソース. 

関連項目[編集]