長友千代治

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長友 千代治(ながとも ちよじ、1936年 - )は、日本国文学者書誌学者。元佛教大学文学部人文学科教授。専門は日本近世文学

略歴[編集]

宮崎県宮崎市生まれ。1960年佐賀大学文理学部国文学専攻卒業。1970年大阪市立大学大学院文学研究科国語国文学博士課程満期退学。1963年5月から1970年10月まで大阪府立図書館司書。1970年11月から1977年3月まで愛知県立大学愛知県立女子短期大学専任講師。1977年4月から1984年3月まで同大学助教授。1984年4月から1990年3月まで同大学教授。1990年4月から1994年3月まで京都府立大学教授。1994年4月佛教大学文学部教授、2007年退任。1990年から日本近世文学会常任委員。近世の出版について研究した。

1989年 大阪市立大学 文学博士 論文の題は「近世貸本屋の研究」[1]

受賞[編集]

1983年に『近世貸本屋の研究』(東京堂出版)で第4回日本出版学会賞佳作を受賞。

審査結果[編集]

 長友著『近世貸本屋の研究』は、近世文学および出版文化の発展に大きく寄与した貸本屋につき、先ずその起源から隆盛まで、営業の内容、顧客の読書状況を総論的にまとめている。

 本研究の特色は貸本屋と顧客の実証的研究にあり、江戸中期河内柏原の三田久次の帳簿と尾州鳴海下郷家の蔵書等を分析して、流通関係だけでなく、売値と買値、貸本の実態を明らかにした。

 第2に、軍書の読書調査により、太閤記、忠臣蔵などの愛読状況を明らかにした。第3に、約6000冊の大蔵書を越後まで運んだ読書家を新発田藩主溝口直侯に比定し、その読書歴と効果を記述している。ほとんど未踏の分野に鍬を入れた重要な研究と評価できる。

受賞の言葉[編集]

 出版は、実際も研究も、たいへんむずかしくまた面白いものであることを、今改めて味わっている。

 実際というのはほかでもなく、拙著刊行についてである。序文にも記したが、某社の企画に東大の延広真治氏の紹介で参加することになった。私には初めての経験で、多少緊張しながら、出版社の要望と私の主張を織り交ぜて書き進めていった。それは①平明な文章でわかり易い叙述をする、②本の性格上出典や論拠の明示をする、③出版社と期日等の約束は守る、等である。①③は無論合意に達し、特に①については適切で有意義な指導を受け、ありがたかった。問題は②で、どうしても受け入れられず、ために後の原稿が先に出版され、妥協できないことを知った私は一年を経過した時点で願い下げとした。その後某社の新書に話が持ち上がったが、一読後にこれも没となった。この間の成り行きを注目されていた国会図書館朝倉治彦氏は、見るに見かねて自分に託せと言われ、結局やっと東京堂出版に引き受けてもらったのである。東京堂出版の松林考至、西哲生の両氏は編集製作で極力私の気持ちを汲んで、拙著に貸本屋蔵書印、広告、営業風俗等の資料を付載するなどの発案までされ、実現した。今振り返ってみると、朝倉氏、東京堂出版との出合がよかったのである。おそらく前記②を欠いては、たとえ同じ内容であったにしても、受賞の対象にはなりえなかったであろう。単に本を出版することと、内容を整えて出版することとは、おのずから別の評価になることを改めて痛感したことである。私には有難い受賞となったが、これもひとえに延広氏、朝倉氏、東京堂出版、その他多くの方々の御教導のおかげである。改めて心からお礼を申し上げる。

 調査研究でも思わぬことにぶつかった。その一つに『小栗忠孝記』序文のことがある。これが貸本屋全盛期を描写した一等資料であることを確認するには時間がかかった。広庭基介氏の紹介で閲覧した京大付属図書館蔵本は、名古屋の貸本屋大惣の旧蔵本で安永6年刊、序文は同5年季秋随山の筆で、普通の貸本。それを当時帝塚山学園女子短大にいた小林賢章氏が、貸本屋の資料として面白い、という。そうか、見落としたかと思って再調査してみても、何も出ない。その後、小林氏に秋里籬島の序文を送ってもらい、胸が高鳴ったことを覚えている。それでは序文がなぜ随山から籬島に変わったのか。それが知りたくて帝塚山学園に行き、板木焼失により25年後に貸本屋向けの覆刻になったことを理解したのである。『小栗忠孝記』は『国書総目録』には京大所蔵の記録しかなく、もし小林氏の情報提供がなければ,私が扱う機会はなかったであろう。初版本と覆刻本の相違を見て、貸本屋や読書史の資料としては、初版本より後印本・覆刻本の方が有益であることを知ったのである。

 拙著は片々たる資料を収集して江戸時代の貸本屋を想定してみたのであるが、当時はそれ程ある筈はないと思っていた資料が、皮肉にも、刊行後にはあちらこちらで目につくのである。今はまだ想定した貸本屋の大筋は変わらないと思っているが、資料の捜査につとめて、一層詳細な貸本屋の研究、ひいては近世読書史・読者の研究に邁進したいと思っている。受賞は大きな励みとなった。[2]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『近世貸本屋の研究』(東京堂出版、1982年)
  • 『本のある風景』(日本古書通信社、1985年)こつう豆本
  • 『日本書誌学大系52 近世の読書』(青裳堂書店、1987年)
  • 『近世上方作家・書肆研究』(東京堂出版、1994年) 
  • 『近世上方浄瑠璃本出版の研究』(東京堂出版、1999年)
  • 『江戸時代の書物と読書』(東京堂出版、2001年)
  • 『佛教大学鷹陵文化叢書7 江戸時代の図書流通』(思文閣出版、2002年)
  • 『重宝記の調方記 生活史百科事典発掘』(臨川書店、2005年)

共著[編集]

  • (廣庭基介)『日本書誌学を学ぶ人のために』(世界思想社、1998年)

編著[編集]

  • 『重宝記資料集成』全45巻(臨川書店、2004-08年) 

共編[編集]

  • (矢野貫一)『日本文学説林』(和泉書院、1986年)
  • 中村幸彦)『浪花の噂話』(汲古書院、2003年)

校註[編集]

所属学会[編集]

  • 日本近世文学会

脚注[編集]

  1. ^ 博士論文書誌データベース
  2. ^ 日本出版学会ホームページ 第4回日本出版学会賞(1982年度)

関連項目[編集]