階級称号

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階級称号(かいきゅうしょうごう)とは、特定の社会あるいは組織職業領域の中での地位技量・実績に基づいて付与される階級およびその名称全般を指す概念である。

主な類型[編集]

階級称号とは、地位に応じて付与される階層化された称号である。職位が序列化されているという意味では職務称号とも親和性、関連性が強いが、階級称号と称されるものはたんに職務称号の範囲に留まるものではない。具体的な事例について下記で概説していく。

王族・貴族の爵位[編集]

王族貴族爵位も国家が法律において授与する爵位も栄誉称号であると同時に階級称号としての性格を有している。特に爵位とは公爵侯爵伯爵子爵男爵の五等爵に加え、準男爵ナイトなどの称号があるのは好例であり、古代中国では当初、五等爵だったものが後代には二十等爵まで拡大し、臣下に対し階級に応じた爵号が授けられていた[1]

大学卒業者等の学位[編集]

大学の学位については、今日必ずしも階級と形容されるわけではない。特に現代日本では大学院博士後期課程、大博士前期課程(修士課程)あるいは専門職学位課程、四年制大学の学士課程(学部)および短期大学の教育段階別に授与される称号であるにしてもそれ自体を明確に階級と呼称することはない。しかし、学位制度草創期の日本では1878年(明治11年)に旧東京大学に学士号の学位授与権が与えられ、東京大学は、法学士理学士文学士医学士製薬士の5つを学位と定めるとともに、初期段階では一等学士から五等学士まで学士号に等級があったとされる。また、実現しなかったものの東京大学では、学士号の下に得業士の学位を制定することを検討したという[2]。加えて、工部大学校でも一等学士(The degree of Master of Engineering)から五等学士までの学位が制定され授与されるようになった[2]1887年(明治20年)に学位令(明治20年勅令第13号)が発布。学位を大博士または博士の二等とし、日本で教育を受けた者や一定の研究を行った者に授与することになった[2]。このように、学位には明文化されていないにせよ、歴史的には一定の序列や等級的な性質が存在していたことは確かである。また、現代でも欧米では、未だに学位の等級的性質が色濃く残っている国や大学が多く存在する。例えば、英国ではスコットランド以外の地域では学部で3年以上の課程を終えることで学士号 (bachelors degree) を得る。これには優等学位 (honours degree) と普通学位 (ordinary degree) とがある。一方スコットランドの一部の大学では、前半2年間の成績により、後半2年間Honours Degreeに進むかGeneral Degreeに進むか振り分けられ、その後半2年間を修了することでそれぞれの学位が得られる。さらに、公刊された研究業績によって審査される、名誉学位的なHigher Doctorate(上級博士)の学位がある[3]

軍人・自衛官・警察官の階級[編集]

一般に、軍人日本自衛官警察官等の階級については、それ自体が法的に称号と位置づけられているわけではない。しかし、元帥などは大将の上位にある称号として位置づけられているのをはじめ、朝鮮民主主義人民共和国では軍人の階級に相当する職位を軍事称号と呼称するなど階級が称号として機能している側面がある[4]。また、タイでは軍人や警察官が退役(退職)後もそのまま階級を称号として名乗ることができることから階級称号とも呼ぶ。タイの第31代首相タクシン・チナワットが同族企業の不祥事をめぐる国民不信の高まりとクーデター等の発生により、海外に亡命したことを受け本人不在のまま有罪判決まで受けたこともあり、2015年には警察官時代の警察中佐の階級称号をはく奪されたのがその例である[5]。また、日本自衛隊の階級についても、現役中退職後を問わず自衛官にとって名誉の称号として機能しているという[6]

競技者・芸能人の階級[編集]

日本では、大相撲横綱大関はじめ力士番付や、落語家真打ちなどの称号も階級称号と形容されることがある[7]

脚注[編集]

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  1. ^ 爵位とは「貴族の称号を序列化し、王権または国家権力が承認ないし賦与する特権や栄典の制度」のことをいう。金田一春彦池田弥三郎『学研国語大辞典 第二版』(学習研究社1989年)313頁参照。
  2. ^ a b c 宮地正人佐藤能丸櫻井良樹編『明治時代史辞典第1巻』(吉川弘文館2011年) 487頁、488頁参照。
  3. ^ 日本の学位制度草創期の歴史については、国史大辞典編集委員会編『国史大辞典第3巻』(吉川弘文館、1983年)177頁、相賀徹夫編著『日本大百科全書 5』(小学館1985年)14頁参照。
  4. ^ 例えば、2001年4月14日朝日新聞報道では、朝鮮中央放送の発表として当時の朝鮮労働党総書記金正日が故国家主席金日成の生誕日である太陽節を迎えるにあたり幹部19人の軍事称号(階級)を引き上げたことが報じられた。「軍幹部19人が昇格 北朝鮮(地球24時)」『朝日新聞』2001年4月14日朝刊7頁参照。
  5. ^ 当時の朝日新聞報道では、記事中で元首相のタクシンが警察官時代の警察中佐の階級称号が剥奪されたことが報じられている。「(地球24時)タクシン氏の階級剥奪 タイ」『朝日新聞』2015年9月8日朝刊11頁参照。
  6. ^ 2005年、自衛官が定年退職時に特別昇任により、退職金への支出が総額17億円に上ったことが報道された。その際、当時の防衛庁人事教育局では、自衛官の特別昇任は「能力があるが、定員に空きがなくて昇進できなかった人の功労に報いるために行っている。自衛官にとって階級は単なる役職と違い名誉の称号であり、退職後のOB同士の人間関係などにも影響がある。退職金の増額につながるが、自衛官は事務官より定年が5、6年早いという背景事情もある」との見解を示している。「自衛官の3割 退官に昇進 1人平均35万円 退職金17億円かさ上げ」『読売新聞2005年9月17日東京朝刊1頁参照。
  7. ^ 特に落語の世界の真打ちは江戸時代に成立した呼称で、入門から前座、二枚目を経て、15年程度で弟子を取ることができる師匠になるのが一般的だとされてきた。しかし、関西方面の上方落語江戸落語では真打ちの運用が同じではなく、特に江戸落語における真打ちとは、現代では必ずしも一人前の証ではなくなってきているという。劇作家榎本滋民は、真打ちとは本来、「一晩の芸能番組で聴衆の心の芯を打つ力のある芸人を指す栄誉称号だったのに、今や階級称号になってしまった。芸能にパワーがなくなった証拠だ」と評している。「真打ち 江戸では階級 上方では栄誉(語っくん 早わかり辞典)」『朝日新聞』2000年5月22日夕刊22頁参照。

参考文献[編集]

文献資料[編集]

  • 相賀徹夫編著『日本大百科全書 5』(小学館、1985年) ISBN 409526005X
  • 金田一春彦、池田弥三郎編『学研国語大辞典 第二版』(学習研究社、1989年)ISBN 4051035018
  • 国史大辞典編集委員会編『国史大辞典第3巻』(吉川弘文館、1983年)ISBN 464200503X
  • 宮地正人、佐藤能丸、櫻井良樹編『明治時代史辞典第1巻』(吉川弘文館、2011年) ISBN 4642014616

報道資料[編集]

  • 『朝日新聞』2001年4月14日朝刊
  • 『朝日新聞』2015年9月8日朝刊
  • 『朝日新聞』2000年5月22日夕刊
  • 『読売新聞』2005年9月17日東京朝刊

関連項目[編集]