電波

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アンテナ(中央)から電波が放射される様子を表した図
ダイポールアンテナが電波を受信する様子を表す模式図。緑の矢印が電波による電界であり、黒の矢印が電流である。

電波(でんぱ、: radio wave)とは、周波数が300万メガヘルツ以下の電磁波、とITU憲章でも、日本の電波法でも定めている[1]。(別の言い方をすると、周波数が3THz(テラヘルツ)以下の電磁波の総称である[2]。)

概要[編集]

電波は周波数が3THz(テラヘルツ)以下の電磁波の総称である。電磁波というのは、周波数が高いものでは赤外線、可視光線、紫外線、さらにX線やガンマ線というものもあるので、「電波というのは電磁波のうち赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線などを含まない部分だ」と考えることもできる[1]

なお電磁波の存在を初めて実証したハインリヒ・ヘルツは著書『Electric Waves』(1893年)の中で、電磁波を「Electromagnetics wave in air(空中の電磁波)」と「The propagation of electric Waves by means of wire(線上の電磁波)」に区別しており、電波に関する国際機関ITU-Rにおけるradio waveの定義も

radio waves or hertzian waves:Electromagnetics waves of frequencies arbitrarily lower than 3000GHz,propagated in space without artificial guide. — 『ARTICLE 1 Terms and definitions,1.5』、ITU(1992)

とあるように、「人工的なガイドなしで空中を伝搬する電磁波」であることを明確化している[3]

「radio wave 電波」は、電磁波を(人間側の)応用分野よって呼び分けた名称である[1]。物理学的には単に電磁波と言っている[1](自然の法則を探求する物理学では、基本的には人間側の応用の都合で細分化して呼び分けるようなことはしていない。)したがって電波の物理的性質は、物理学では基本的に電磁波の性質として記述されている。

物理的な性質

物理学では、波動全般は速度・周波数・波長の3要素で特定されており、そのなかで真空中の電波(電磁波)の速度については光速で一定であることから、電波に関しては、残りの2要素のいずれか、つまり周波数または波長の一方によって特定できる[1]。(一方の周波数だけが与えられればもう一方の波長もそれに応じた値になるに決まっており、反対に波長が与えられればおのずと周波数も決まる、という関係にある。)

電波は、放射されると光速で周囲の空間に伝播する。そして複数の電波が飛び交う空間では電波と電波は互いに干渉しあっている。

電波使用の管理・規制

電波は通信や放送など多様な用途に使用されており、今では人類の文明を支えている[1]。ただし人類が住む地球の周囲に、電波が伝わる空間はただひとつしか存在しない[1]。だから電波は「有限な資源」と呼ばれている[1]。電波を使用するということは人類共有のたったひとつの地球周囲の空間を使用することであるから、国境を越えてグローバルな倫理的・技術的規制が必要であり[1]、どんな組織や個人であれ、この規制に反して勝手に電波を送出したりすると、他の通信に妨害を与えてしまうことになってしまう[1]。電波を国際的に管理する役目をになっているのが国際電気通信連合(ITU)であり、本部をスイスのジュネーブに置いている[1]。各国は、ITUに加盟し、ITU条約、ITU憲章を遵守する義務を負う[1]。さまざまな機器が使用する電波の周波数帯域(スペクトラム)も、ITUおよび、ITUに加盟する各国政府によって管理・規制されている。

たとえばEUもITUに加盟しており、EU加盟各国はEUのRadio SPectrum Committee(RSC、電波スペクトラム委員会)に参加して協調的に管理している[4]。米国もITUに加盟しておりその電波スペクトラムは、非政府による利用については連邦通信委員会(FCC)によって管理され、政府による利用の場合は国家電気通信情報管理局(NTIA)によって管理されており、その両方に関係する利用については両管理組織がともに同意しなければならない、と定められている。 日本電波法および関係する総務省令は、ITU加盟国として、電波の利用の公平かつ能率的な利用を、国際的にも国内的にも確保するための指針を示すものであり[1]、日本では電波は総務省が管理すると定められている。

なお300万メガヘルツ(3テラヘルツ)以上の周波数領域は、遠赤外線の領域に近づき、送受信するのが実質的に困難な領域となるので、法で規制されているのは、あくまでも電波として使い得る範囲にある周波数帯である[1]。また強度についても規定のレベル以下のものについては規制の範囲には入れられていない[1]。規制の対象とされる強度は、たとえば、送信設備から3m離れた位置で測定したときの電界強度が毎メートル500マイクロボルト以上となっている(322メガヘルツ以下の周波数のとき)[1]。また、人工的な導波路である同軸ケーブルや、導波管の内部を通す電磁波の伝播まで電波として規制するようなことはされていない[1]

電波の用途

電波の用途としては、次のようなものを挙げることができる。

歴史[編集]

1864年ジェームズ・クラーク・マクスウェルは「は波の姿をした電磁散乱である」と予測した。それから13年後の1887年にハインリッヒ・ヘルツがマクスウェルの方程式から光よりも周波数の低い電磁波(電波)の姿を推測し、電磁波の発生と検出を可能とする実験機器を考案制作してその存在を実証した[3]

今日、電波は英語では"Radio wave"もしくは"Hertzian wave"と呼ばれており、"Radio"と略して呼ばれる場合もある[3]。CCIR(現在のITU-R)の基金が設立された1927年に世界的な公用語として定着した。一方、1904年にイギリスの郵便局が無線電信をRadioと称したことから、Radioは空間に適した周波数帯の電磁波を使用して情報を搬送する技術・機器・システムを指す語として一般に使われるようになった[3]

日本語の「電波」という訳語は明治26年(1893年)に逓信省技師の伊藤潔が著した『電気訳語集』が初出と考えられる[3]。『電気訳語集』では、"Electric wave"の訳として「電波」を充てている。その後「電波」の用例は増えていったが、大正4年(1929年)の無線電信法には「電波」の文字はない。1950年に制定された電波法によって現代の「電波」が公用語として定義された[3]

電波における電磁スペクトル[編集]

周波数と対応する波長によって電波は以下の周波数帯に分割される。

周波数帯 略称 ITU基準 周波数と波長 用途例
3Hz以下
100,000km以上
極極極超長波 ELF 1 3 - 30Hz
100,000km - 10,000km
潜水艦の通信
極極超長波 SLF 2 30 - 300Hz
10,000km - 1000km
極超長波 ULF 3 300 - 3000Hz
1000km - 100km
鉱山における通信
超長波 VLF 4 3 - 30kHz
100km - 10km
無線心拍計地球物理学
長波 LF 5 30 - 300kHz
10km - 1km
電波航法電波時計長波放送(一部の国でのAM放送
中波 MF 6 300 - 3000kHz
1km - 100m
中波放送(多くの国でのAM放送)、雪崩ビーコン
短波 HF 7 3 - 30MHz
100m - 10m
短波放送アマチュア無線業務無線核磁気共鳴分光法
超短波 VHF 8 30 - 300MHz
10m - 1m
超短波放送FM放送)、VHFテレビ放送、業務通信、核磁気共鳴分光法
極超短波 UHF 9 300 - 3000MHz
1m - 100mm
UHFテレビ放送(地デジ含)、電子レンジ携帯電話無線LANBluetoothGPS、業務通信、核磁気共鳴分光法
センチメートル波 SHF 10 3 - 30GHz
100mm - 10mm
ETC、無線LAN、衛星放送、最新レーダー電子スピン共鳴
ミリ波 EHF 11 30 - 300GHz
10mm - 1mm
電波天文学、高速中継放送、最新レーダー(ミリ波レーダー)、電子スピン共鳴
サブミリ波 300GHz以上
1mm以下

日本での規定[編集]

質の規定

電波法第28条に「送信設備に使用する電波の周波数の偏差及び幅、高調波の強度等電波の質は、総務省令で定めるところに適合するものでなければならない。」と規定している。これを受けた無線設備規則には、第1章総則第2節電波の質として、第5条から第7条に「周波数の許容偏差」、「占有周波数帯幅の許容値」、「スプリアス発射又は不要発射の強度の許容値」があり、具体的な値は別表第1号から第3号に規定するものとしている。

広域使用電波という線引き

電波法第103条の2第2項に「広範囲の地域において同一の者により相当数開設される無線局に専ら使用させることを目的として別表第7の上欄に掲げる区域を単位として総務大臣が指定する周波数(6000MHz以下のものに限る。)の電波」と規定している。 広域使用電波の指定は、電波法施行規則第51条の9の9に「総務大臣が別に告示により行うものとする。」とされ、この規定に基づき告示[5]される。

この規定は、電波利用料の算定に際し、電波の経済的価値に応じて負担する考え方を導入したもの[6]で、携帯電話など特定無線局として包括免許されるものについて適用され、使用する周波数幅に応じて増減される。 当初[7]の上限は3000MHz以下であったが後に[8]6000MHz以下となった。

  • 導入の検討時から「広域用電波」という文言が使用され、電波法改正後でもこの語を使用した記事があるが、これは誤字である。

注釈[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 『日本大百科事典』(ニッポニカ)、電波。
  2. ^ https://www.arib-emf.org/sp/01denpa/denpa01-01/
  3. ^ a b c d e f 野島俊雄・大西輝夫、電波産業会電磁環境委員会(編)『電波と生体安全性:基礎理論から実験評価・防護指針まで』 <設計技術シリーズ> 科学情報出版 2019年 ISBN 978-4-904774-79-3 pp.120-131.
  4. ^ EU公式ページ、"Managing and monitoring the EU's radio spectrum"
  5. ^ 令和元年総務省告示第174号 電波法第103条の2第2項の総務大臣が指定する周波数を定める件(総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集)
  6. ^ 電波利用料の料額算定の考え方(総務省電波利用ホームページ - 電波利用料制度 - 電波利用料の額)(2007年8月8日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  7. ^ 平成17年法律第107号による電波法改正の平成18年4月1日施行
  8. ^ 令和元年法律第6号による電波法改正の令和元年10月1日施行

関連項目[編集]