静岡鉄道1000形電車

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静岡鉄道1000形電車
静岡鉄道1000形電車(スカート取付前) (日吉町駅)
静岡鉄道1000形電車(スカート取付前)
日吉町駅
基本情報
製造所 東急車輛製造
製造年 1973年 - 1985年
製造数 24両
運用開始 1973年4月25日[1]
主要諸元
編成 2両
軌間 1,067 mm
電気方式 直流600 V
架空電車線方式
最高運転速度 70 km/h[注釈 1]
設計最高速度 90 km/h[1]
起動加速度 2.2 km/h/s[4][注釈 2]
減速度(常用) 3.5 km/h/s[1][4]
減速度(非常) 4.5 km/h/s[1][4]
編成定員 280(座席96)人
車両定員 140人(座席48)人[1]
車両重量 クモハ1000(Mc)
非冷房時:31.7 t[1]
新製冷房車:32.7 t[2]
クハ1500(Tc)
非冷房時:23.5 t[1]
新製冷房車:25.7 t[2]
最大寸法
(長・幅・高)
17,840 ×2,744 ×4,110 mm(新製冷房車)[5]
車体 ステンレス鋼[1]
台車 ダイレクトマウント式空気ばね台車
Mc車:TS-812[1][2]
Tc車:TS-813[1][2]
主電動機 直流直巻電動機
TDK806/6-G[1]
TDK806/6-J[6]
主電動機出力 110 kW[1][6]
駆動方式 中空軸平行カルダン駆動方式
歯車比 84:15(5.6)[1][4]
編成出力 440 kW
定格速度 35.8 km/h[6]
制御装置 抵抗制御・直並列組合せ・弱め界磁
ES769-A-M[1]
ES769-A1-M[2]
制動装置 発電ブレーキ併用全電気指令式電磁直通空気ブレーキ[1][4]直通予備ブレーキ
保安装置 i-ATS(変調方式MSK、車上パターン制御方式)、ATS-SN(点制御速度照査機能付)
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静岡鉄道1000形電車(しずおかてつどう1000がたでんしゃ)は、静岡鉄道1973年昭和48年)から導入した通勤形電車である。

概要[編集]

車体に高抗張力ステンレス鋼を使用した静岡鉄道初のオールステンレス車両[3]である。 静岡清水線の在来車両置き換えのために、制御電動車クモハ1000と制御付随車クハ1500からなる2両固定編成が1973年から1985年(昭和60年)にかけて12本の計24両が導入された。なお、運用開始後鉄道友の会静岡支部より「79年 おれんじ賞」を授与されている。

車体[編集]

18m級[3]3扉という基本的な車体規格は300形と共通であり、側面窓配置はdD3D3D1(d:乗務員扉, D:客用扉)となっているが、本形式においては戸袋窓は設置されていない。またステンレス車体を生かして外板は無塗装とされ、軽量化および保守の容易な構造となっている[1]。 前面デザインは運転台からの視界確保を目的として大型窓の非貫通形状とされ、窓ガラスには安全性強化を目的として防曇特殊強化ガラスを用いている[1]。側面窓にはバランサー付きの一段下降窓を採用し、客用扉には幅1300mmの両開き式扉を採用した[1]

運転台[編集]

力行とブレーキを一本のハンドルで操作するワンハンドルマスコンを採用した。計器盤はデスクタイプとされ、走行中に必要な各種灯具やスイッチ類は確認・操作がしやすいように取付位置を検討したほか、運転士の姿勢や足回りのスペース等乗務時の疲労低減や保守作業のしやすさも考慮されている[1]

内装[編集]

室内および天井にはメラミン樹脂積層合金のアルミデコラを使用して無塗装とし、床面はステンレスのキーストンプレートにユニテックスを充填したうえで、厚さ3mmのロンリウムを用いて被覆した構造[1]とした。室内照明には、40Wのラピッドスタート形蛍光灯を14本と15Wの予備灯を4灯設置した[5]。 また、座席はすべてロングシートである[5]

主要機器[編集]

主制御装置は、東洋電機製造製で一台で4台の主電動機を制御する1C4Mの発電ブレーキ付電動カム軸式抵抗制御器ES769-A-Mもしくは同ES-769-A1-Mを採用した。 これらの制御器は応荷重装置を設け、定員200%まで加減速度を一定に保つことができるほか、空転検知機能を持つ[1][4]

主電動機は、東洋電機製造製直流直巻電動機TDK806/6-GおよびTDK806/6-Jを採用した。いずれも300形の主電動機であるTDK806/6-Fと比較して出力強化がなされた改良型であり、両者共基本性能は同一[注釈 3]である。駆動装置はKD-320-Aハスバ歯車一段減速中空軸平行カルダン駆動装置を採用し、歯車比は300形と同じく84:15である[5]定格速度は35.8 km/hとなっている[6]

補助電源装置は、当初東洋電機製造製の電動発電機(MG)であるTDK368-A(出力7kVA・100V-60Hz)およびバッテリーとしてアルカリ電池(100V、20Ah)を搭載したが、新製冷房車となった1009編成以降、MGは冷房用電源を供給するための大容量化およびメンテナンスフリー化を計ってブラシレス電動発電機であるTDK-3314-A(出力60kVA・3相交流200V-60Hz)に変更された[5][2]電動空気圧縮機(CP)はHB-1500B(吐出量1500L/min)を1台搭載する[4]

ブレーキ装置は、日本エヤーブレーキ(現ナブテスコ)製HRD-1全電気指令式電磁直通空気ブレーキを採用した[1]。これは静岡鉄道の車両として初めての全電気指令ブレーキである。常用ブレーキのほかに、非常ブレーキ、また保安ブレーキとして予備直通ブレーキを設置している[1]

集電装置は、1008編成までPT-4308-A-M[5]菱型パンタグラフを採用したが、1009編成・1010編成からは搭載する分散式冷房装置の設置間隔をできる限り均一化するために折り畳み寸法が小さい下枠交差型のTDK-4814[2]に変更された。

台車は、東急車輌製造製の車体直結(ダイレクトマウント)式空気バネ台車であるTS-812(Mc)およびTS-813(Tc)を採用した。いずれも枕バネにはダイヤフラム式空気バネを用いており、下揺れ枕を使用せず、ブレーキはレジンブレーキシューを使用する片押し式踏面ブレーキとした[1]

1008編成までは非冷房車として竣工し、各車内には客室および運転室に計7台の扇風機が設置されていた[5]が、1979年(昭和54年)に増備された1009編成および1010編成からは扇風機を廃止のうえで冷房装置が導入され、屋根上に東芝製RPU-2211分散式冷房装置冷凍能力8000kcal/基)を各車4基ずつ搭載した[7]。のちに非冷房車に対しても冷房装置の搭載改造が行われたが、こちらは集中式冷房装置を各車1基ずつ搭載する形に改められている。

急行運用時に使用するミュージックホーンを搭載する[6]

改造工事[編集]

静岡清水線においては1975年(昭和50年)9月からワンマン運転を開始し、それ以前に竣工した車両にも以下の改造工事が施工された。

  • 列車無線装置の設置[8]
  • テープ再生機を用いた自動放送装置の導入[8]
  • 車両用信号炎管の設置[8]
  • 車内非常通報装置の設置[9]
  • 車側ミラーの設置[9]
  • 連結面妻部にドア閉時警告用の警報装置の設置[9]

前述の様に当初車体は無塗装であったが、1985年より一部の編成の前面にストライプ状の警戒塗装が施され[10]、のちに全編成に波及した。その後全面裾にオレンジ色の反射素材による警戒塗装が追加されている。

また、2008年の1006編成を皮切りに前面に排障器(スカート)の設置が開始されている[11]。また、2011年から車側ミラーの撤去が実施された。[要出典]

運用と今後[編集]

A3000形への置き換えに伴い、2024年までに全編成が運用を終了する予定である。

2018年3月現在3編成が運用を終えている。1004編成と1002編成は2017年11月に解体、1003編成が解体中(2018年11月)である。

編成表[編集]

凡例
Mc …制御電動車、Tc …制御付随車
CON…制御装置、PT…集電装置、CP…電動空気圧縮機、MG…補助電源装置
1000形電車編成表

竣工 運用終了 備考
クモハ1000
(Mc)
クハ1500
(Tc)
搭載機器 COM,PT CP,MG

1001 1501 1973年(昭和48年)
1002 1502 2017年(平成29年)[12]
1003 1503 2018年(平成30年)[13]
1004 1504 2016年(平成28年)[14]
1005 1505 2019年(平成31年)  
1006 1506 1976年(昭和51年)
1007 1507 2019年(平成31年)  
1008 1508
1009 1509 1979年(昭和54年)
1010 1510
1011 1511 1984年(昭和59年)
1012 1512 1985年(昭和60年)

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 路線の認可最高速度より[3]
  2. ^ 非冷房車は2.4km/h/s[1]
  3. ^ 「 端子電圧300V、一時間定格出力110kW、定格電流412A、定格回転数1,310rpm 」[4][5]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y 『鉄道ピクトリアル (通巻280号)』 p.55
  2. ^ a b c d e f g 『鉄道ファン』通巻227号 p.79
  3. ^ a b c 寺田裕一『データブック 日本の私鉄』ネコ・パブリッシング、2002年、p.83
  4. ^ a b c d e f g h 『鉄道ファン』通巻227号 p.巻末
  5. ^ a b c d e f g h 『鉄道ピクトリアル (通巻280号)』 p.56
  6. ^ a b c d e 『鉄道ピクトリアル (通巻431号)』 p.143
  7. ^ 『鉄道ファン』通巻227号 p.78
  8. ^ a b c 『鉄道ファン』通巻227号 p.76
  9. ^ a b c 『鉄道ファン』通巻227号 p.77
  10. ^ 『鉄道ピクトリアル (通巻453号)』 p.78
  11. ^ 静岡鉄道 1006編成にスカート設置 - 鉄道ファン・railf.jp 鉄道ニュース、2008年10月12日
  12. ^ 静岡鉄道「1002号さよならイベント」開催 - 鉄道ファン・railf.jp 鉄道ニュース、2017年3月18日
  13. ^ 静岡鉄道で1000形1003編成の撮影会 - 鉄道ファン・railf.jp 鉄道ニュース、2018年3月22日
  14. ^ 静岡鉄道で「ありがとう1004号」イベント - 鉄道ファン・railf.jp 鉄道ニュース、2016年3月11日

参考文献[編集]

  • 鉄道図書刊行会 鉄道ピクトリアル 通巻280号 1973年7月
    • 「静岡鉄道新造1000形車について」静岡鉄道株式会社鉄道部 pp. 55-56
  • 電気車研究会 鉄道ピクトリアル 通巻431号 1984年4月
    • 「静岡鉄道 」 武田忠雄 小林隆雄 pp. 141-143
  • 電気車研究会 鉄道ピクトリアル 通巻453号 1985年9月
    • 「静岡鉄道1000系にストライプ入る 」 p. 78
  • 交友社鉄道ファン』1980年3月号 No.227
    • 「静岡鉄道に冷房車が登場」 静岡鉄道鉄道部技術課 pp. 76-79
    • 「形式図 静岡鉄道1000系冷房車」 p. 巻末
  • 寺田裕一 『データブック 日本の私鉄』 ネコ・パブリッシング 2002年、p. 83