縮退半導体

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縮退半導体とは、高濃度の不純物(ドーパント)が添加されたことでフェルミエネルギー伝導帯価電子帯の中に存在する不純物半導体のこと。

非縮退半導体[編集]

EVAC:真空準位、EA:電子親和力、EC:伝導帯下端のエネルギー、EF:フェルミエネルギー、EV:価電子帯上端のエネルギー

非縮退の近似[編集]

伝導帯の電子について、エネルギー準位Eを占有する電子数の統計的平均はフェルミ分布で表される。

ここでフェルミエネルギー化学ポテンシャル)である。フェルミエネルギーは価電子帯の電子密度と伝導帯の正孔密度に依存する。例えば真性半導体のフェルミエネルギーはバンドギャップのほぼ真ん中に位置するが、ドナーが添加されることで伝導帯の電子濃度が高くなるとフェルミエネルギーの位置は伝導帯に近づく。

ここで不純物添加量が小さい非縮退半導体の場合を考える。このときフェルミエネルギーはバンドギャップ内に存在し、伝導帯からも価電子帯からも十分に離れている。つまり伝導帯下端のエネルギーと価電子帯上端のエネルギーとして、

が成り立つ。このときフェルミ分布はボルツマン分布で近似することができる。

非縮退のn型半導体では、ドナー原子は十分に希薄であり、孤立原子のようにふるまう。非縮退半導体のバンドギャップは真性半導体のバンドギャップギャップと同じである。熱平衡状態の非縮退半導体における電子密度と正孔密度の積は、有効状態密度を使って次のように書ける。

縮退半導体[編集]

高濃度にドープした半導体は縮退半導体と呼ばれる。縮退n型半導体におけるフェルミエネルギーは伝導帯内部にあり()、縮退p型半導体では価電子帯内部にある()。つまり一方のバンドにおいてボルツマン分布による近似が破綻している。

バンドギャップの縮小[編集]

縮退n型半導体を考える。ドナー濃度が高くなりドーパントが互いに接近するとドナー準位が重なり合い、バンド(ミニバンド)が形成される。母体であるシリコンの伝導帯とも重なると、伝導帯の実効的な下端は、真性半導体の伝導帯の下端から重なり合う不純物バンドの底までだけ低下する。

伝導帯の下端が低下することで、バンドギャップはだけ縮小する。を真性半導体のバンドギャップ、をドナー濃度におけるバンドギャップとすると、

見かけのバンドギャップ縮小[編集]

n型縮退半導体では、伝導帯下端が低下するとともにフェルミ準位が上昇して伝帯帯の内部に入り、伝導帯内でも以下の準位は電子に占有される。

よって価電子帯の電子を励起するのに必要となるエネルギーはではなくになり、不純物による見かけのバンドギャップ縮小が生じる。

縮退半導体のキャリア密度[編集]

n型に縮退半導体を考える。 真性半導体における伝導帯の下端を、n型縮退半導体の伝導帯の下端を、見かけの伝導帯の下端(フェルミ準位)を、不純物による伝導帯下端の低下をとする。価電子帯は変化していないとすると、見かけのバンドギャップ縮小は次のように近似できる。

n型縮退半導体では全てのドナー状態が互いに重なり合い、半導体自体の伝導帯とも重なっているので、

フェルミ準位は価電子帯から十分に離れているので、は非縮退半導体のようにボルツマン分布の近似を使って計算できる。

したがって積は、次のようになる。

すなわち非縮退半導体の積はではなく、n型の縮退半導体では因子の修正を受ける。p型の縮退半導体では次のようになる。

参考文献[編集]

  • B.L.アンダーソン、R.L.アンダーソン 『半導体デバイスの基礎』上巻(半導体物性)、樺沢宇紀訳、丸善出版、2012年、93-125頁。ISBN 978-4621061473。