食文化

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食文化(しょくぶんか)は、食(食事)にまつわる文化のこと。

概要[編集]

食材の選び方、献立の立て方、調理法といったことから、食器の選び方、また誰と、どのように食べるのか、といったことや、作法マナーなどに至るまで多くのことが含まれる。

食の頻度、摂取する時刻、なども食文化の要素のひとつである。また普段は何を食べるか、暦上特別な日には何を食べるのか、ということもある。

民族宗教地域国家等々によってそれぞれの多様な食文化が存在する。固有のものがある一方で、麺類のように地域・国境を越えて食文化が伝播している場合もある。

たとえばユダヤ教には「カシュルート」や「コーシェル」と呼ばれる食物規定があり、これはもとをたどれば旧約聖書において、食べてよいもの、食べていけないもの、一緒に食べてはいけないものの組み合わせ、動物の屠り方、調理法などに関すること細かに記述・規定されていることによるものである。厳格な教派においては現在でもそれを厳格に守っているユダヤ教徒が多い。(教派によっては、いくらか緩くなっているものもある)。Pesaḥペサハ(過越祭、すぎこしのまつり、ニサン月14日の夜、太陽暦で言うと3月か4月の移動日に始まり一週間つづく。)には、先祖がエジプト人の奴隷であった時にモーセに率いられエジプトを脱出しようとした時、神はエジプト中の赤子を殺したが、小羊の血を家の入口に塗ったヘブライ人の家だけは「過ぎ越した」(殺さなかった)という故事を思い起こし、過越祭の最初の晩には「セデル」と呼ばれる正餐を催し、小羊・苦菜・マッツァー(種なしパン、膨らますための酵母を入れないパン)を食べる。そして「ハガダー」という、出エジプトに関する物語・詩篇を読み、先祖がエジプトでの奴隷の身分から救出されたことを記念する。

ムスリム(イスラーム教徒)は、豚肉は不浄のものとして食べない。豚、血、アルコールを含むものは口にしない。鶏、羊などは食べることができるが、さばき方が決められており、神(アッラー)の名を唱えながら鋭利な刃物でさばく、と定められている。イスラム法にかなっている食べ物を「ハラール」という。中東では、ハラールに関して寛容になっているムスリムも増えたが、インドネシアのムスリムの中にはハラールに関して厳密な人も多い。

ムスリムはラマダーン月(イスラム暦の月のひとつ)には、日の出から日没まで断食を行い(また、飲むこと、喫煙、性交、みだらなことを考えること、嘘をつくこと、人を騙すこと、等々も禁じられており)こうした断食はイスラム教の信仰の中でも最重要なもののひとつである。断食によって神が命じたことを行い、逆に禁止された全てから遠ざけることでタクワ(神を意識すること)を増やす。断食を行うムスリムは多くの罪から助けられ、ジャハナム(地獄)から守られる、とされる。断食をすることによって、貧しくて食べるものもない人々の苦しみを感じることができ、そうした人々の気持ちに寄り添うことができるようになる。ラマダーン月になるとイスラームは皆、仕事を終えるとまっすぐ帰宅し、日没後に家族・親族が集い、一緒にイフタール(断食明けの食事)を仲良く楽しく食べる。ラマダーン月には街の料理店にはお客はまったくいなくなるという。ラマダーン月には世界中のイスラーム教徒はひとつになっていると実感し、信仰心が高まる。

(インドに多い)ヒンドゥー教徒は牛は聖なるものと考えており、牛肉は食べない(代わりに鶏肉などをよく食べる)。

こうして様々な食文化がある。(ちなみに、航空機の国際線などでは様々な食文化の人が乗客となりうるので、ユダヤ教徒向け、イスラーム向け、ヒンドゥー教徒向けなど、典型的な人を想定していくつか機内食の献立が用意されていることも多く、予約時にそれを指定すればそれを食べられるようになっていることは多い。)

ヨーロッパ近世では、地理上の発見や植民地を得たことが、食材や香辛料などの面でその食文化に大きな影響を与えた。

日本においては、仏教僧侶の献立(特に精進料理)や、平安時代貴族酒宴における大饗料理、さらに大饗料理の系譜を引き武士社会における酒宴において儀式的な料理となった本膳料理などが成立する。本膳料理は客個別の卓上に膳部が配膳される銘々膳で、一汁三菜のように汁+菜で構成され、後々の日本人の食文化に大きな影響を与えてきた。その後、明治維新に伴う文明開化にともない牛肉などを食べる食肉文化が流入。他にも、太平洋戦争中の食糧不足、連合国軍最高司令官総司令部の占領下の日本での食糧援助、高度経済成長などでも食文化が急速に変化した。

現代社会グローバリズムの中で、それぞれの食文化は均一化の方向へ向かっている面もある。欧米企業を主体にしたファストフード店が、世界各国に展開していたり、インスタント食品スナック菓子などが流通している。とは言うものの、世界各国の各家庭では、親から子へと伝統的な家庭料理が伝授されつづけているし、郷土料理の再評価や、地元の食材を用いた料理の評価(地産地消)、「スローフード運動」も起きている。

くらしき作陽大学に、日本初の「食文化学部」が設置されている。

関連項目[編集]

関連書[編集]

  • 『食文化入門』石毛直道、鄭大声 編集 講談社 ISBN 4061397729
  • 『食と文化の謎』 マーヴィン ハリス (Marvin Harris)、板橋作美 訳 岩波現代文庫 岩波書店 ISBN 4006030460
  • 『食の文化を知る事典』 岡田哲 東京堂出版 ISBN 449010507X
  • 『食の世界地図』 21世紀研究会 編集 文春新書 文藝春秋 ISBN 4166603787
  • 『世界地図から食の歴史を読む方法―料理や食材の伝播に秘められた意外な事実とは?』 辻原康夫 KAWADE夢新書
  • 『食の歴史1』 J‐L.フランドラン、M.モンタナーリ、菊地 祥子、末吉 雄二、鶴田 知佳子 宮原信、北代 美和子 訳 藤原書店 ISBN 4894344890
  • 『食の歴史2』 J‐L.フランドラン、M.モンタナーリ、菊地 祥子、末吉 雄二、鶴田 知佳子 宮原信、北代 美和子 訳 藤原書店 ISBN 4894344904
  • 『勘違いだらけの通説世界の食文化』 巨椋修 リイド社 ISBN 4845837519