007 死ぬのは奴らだ

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007 死ぬのは奴らだ』(ダブルオーセブン しぬのはやつらだ、Live And Let Die)は、イアン・フレミングの長編小説『007』第2作。および、それを翻案とした1973年公開、ガイ・ハミルトン監督のスパイアクション映画『007』シリーズ第8作。ジェームズ・ボンド役を、3代目のロジャー・ムーアが最初に演じた作品である。

小説[編集]

イアン・フレミングの小説『007』シリーズ長編第2作。1954年ジョナサン・ケープ社から出版された。日本では1957年早川書房から井上一夫訳でハヤカワ・ポケット・ミステリの一点として刊行された。これがシリーズ最初の邦訳である。

ストーリー[編集]

ブードゥー教ニューヨークのハーレムを支配し、ソ連スメルシュの一員でもある黒人犯罪王ミスター・ビッグは、海賊“血まみれモーガン”の財宝の金貨をアメリカに持ち込み資金源としていた。

イギリス秘密諜報部員007ジェームズ・ボンドニューヨークに派遣され、FBIのデクスター主任やCIAフェリックス・ライターと協力して調査を開始するが、既にその情報を掴んでいたミスター・ビッグから手荒い歓迎を受ける。

だが、霊感能力を持ち、ミスター・ビッグが妻にしようとしているソリテアが寝返り、ジェームズは彼女とセントピーターズバーグへ向かうが、そこで彼女は奪い返され、フェリックス・ライターもに片腕・片脚を食いちぎられた姿で送り届けられる。怒りに燃えるボンドは、カリブ海の島国ジャマイカでミスター・ビッグと最後の対決を行う。

出版[編集]

  • 『死ぬのは奴らだ』井上一夫訳、早川書房〈ハヤカワ・ミステリ文庫〉、1976年4月、ISBN 978-4150706524
  • 改訳版『007 死ぬのは奴らだ』井上一夫訳、早川書房〈ハヤカワ・ミステリ文庫〉、1998年3月、ISBN 978-4151713521
  • "Live and Let Die" , Penguin Classics, 2004/06, ISBN 978-0-14-118757-0

コミカライズ[編集]

さいとう・たかを作画。小学館から1968年刊行、2015年復刻版[1]

映画[編集]

007 死ぬのは奴らだ
Live and Let Die
Liveandletdie-logo.svg
監督 ガイ・ハミルトン
脚本 トム・マンキーウィッツ
原作 イアン・フレミング
製作 ハリー・サルツマン
アルバート・R・ブロッコリ
出演者 ロジャー・ムーア
ヤフェット・コットー
ジェーン・シーモア
音楽 ジョージ・マーティン
撮影 テッド・ムーア
編集 バート・ベイツ
配給 ユナイテッド・アーティスツ
公開 アメリカ合衆国の旗 1973年6月27日
イギリスの旗 1973年7月5日
日本の旗 1973年7月28日
上映時間 121分
製作国 イギリスの旗 イギリス
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $7,000,000[2]
興行収入 世界の旗 $161,800,000[2]
配給収入 日本の旗 8億3000万円
(1973年度洋画配給収入2位)[3]
前作 007 ダイヤモンドは永遠に
次作 007 黄金銃を持つ男
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ロジャー・ムーア
(2009年撮影)

概要[編集]

前作『007 ダイヤモンドは永遠に』で一度限りの復帰となったショーン・コネリーの後継者として、新しいジェームズ・ボンド役に指名されたのがロジャー・ムーアである。ロジャーはこのオファーを受けるのは初めてではなく、シリーズ第1作『ドクター・ノオ』を製作する際にも指名されたが、当時はテレビ番組で忙しく断っていた。それから10年後、ようやく46歳でボンド役を射止めた(実はロジャーはショーン・コネリーよりも3歳年上である)。彼が演じるボンドはショーン時代のハードな部分が削られ、軽妙でユーモラスな007となった。コネリーのボンドもジョークをよく発したが、ムーアはジョークをさらに増やした。

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

映画ストーリー[編集]

カリブ海の島国、サン・モニークを調査していたイギリス情報部員が相次いで3人殺害された。さっそくアメリカに飛んだボンドはフィリックス・ライターとともにサン・モニークの大統領、Dr.カナンガを捜査する。カナンガは自らハーレムの大物Mr.ビッグに変装し、レストランチェーン「フィレ・オブ・ソウル」を通じて麻薬を無料で配布し、アメリカに麻薬中毒患者を増加させ、その後に麻薬の値段を吊り上げることで荒稼ぎしようとしていた。Dr.カナンガにタロットカードで指示を与える謎の美女、ソリテアから情報を得るため、ボンドはカリブ海へ向かった。

ボンドガール[編集]

イギリス、首都ロンドン生まれの都会人女性、ジェーン・シーモアがボンドガールに選ばれた。1970年に、シーモアは戦争ドラマ「ザ・オンリー・ウェイ」に出演した。彼女はナチスの迫害からの避難所を求めているユダヤ人女性、リリアン・スタイン役だった。1973年に、彼女は1970年代に成功したシリーズ「オネディンライン」で、重要なテレビの役柄を獲得した。この間、彼女は2部構成のテレビミニシリーズ「フランケンシュタイン:真の物語」に主任プリマとして出演した。彼女はまた、ウィンストン・チャーチルのガールフレンド、パメラ・プラウデンとして「若きウィンストン」に出演した。この作品は、義理の父リチャード・アッテンボローがプロデュースしていた。

1973年、シーモアはジェームズボンドの映画『Live and Let Die』でボンドガール ソリティアとしての役割を果たし、国際的な知名度を得た。IGNは彼女を「Top 10 Bond Babesで10位」にランク付けした。1975年に、シーモアは、プリンセスにファラとしてキャストし『シンドバッド虎の目大冒険』の第3部。映画は、1977年に完成するまで公開されなかった。1978年に、彼女は『バトルスター・ギャラクティカ』に出演した。。シーモアは、コメディーの『オ・ヘヴンリー・ドッグ』でチェビー・チェイスと共演した。私生活ではシーモアは、マイケル・アッテンボローと結婚したが、後に離婚。別な男性と再婚している。

興行成績[編集]

1973年の映画の世界興行成績で第3位[5]。日本では、1973年度の外国映画配給収入の第2位[3]

キャラクター、キャストなど[編集]

ジェーン・シーモア
(1994年撮影)
デヴィッド・ヘディソン
(2009年撮影)
  • カジノ・ロワイヤル』以前の20作品で、Q(もしくはブースロイド少佐)が登場しなかったのは本作だけ(ただし、腕時計を修理に出していたということで、Qの名前だけは出てくる)。なお、『ワールド・イズ・ノット・イナフ』までQを演じたデスモンド・リュウェリンが引退するまで、リュウェリンが出演しなかったのは本作と『ドクター・ノオ』の2作である。また、Qという役名が登場したのは『ゴールドフィンガー』が最初。『ロシアより愛をこめて』でリュウェリンが初出演した時の役名はQというコードネームではなく「ブースロイド少佐」であり、『ドクター・ノオ』ではピーター・バートンがブースロイド少佐を演じている。
  • ロジャー・ムーアの母がリチャード・ディックスの大ファンだった為、リチャードの息子ボブに出演依頼する。
  • 脚本家と監督からバート・レイノルズがボンド役候補に上がったが、「長身の英国人」との条件により、プロデューサーから却下された。
  • 脚本家から、ポップ・ソウル歌手ダイアナ・ロスがソリテール役候補として名前が出たが、プロデューサーは原作通り、セクシーで無垢な印象の「白人」との方針で却下された。
  • ソリテール役にカトリーヌ・ドヌーヴキャサリン・ロスも候補に出ていたが、イギリスのテレビ番組「The Onedin Line」を見たブロッコリがジェーン・シーモアを抜擢した。
  • カナンガはクロコダイル園(Jamaica Swamp Safari Limitedワニ1500頭)の経営者ロス・カナンガの名に由来する。
  • ワニ革靴を履いていたロジャー・ムーアは、実際ワニに襲われそうになる。
  • ブロッコリとサルツマンはロジャーとカジノで知り合ったという。
  • ヤフェット・コットーは『110番街交差点』の撮影中にデイヴィッド・ピッカー元UA社長から出演依頼を受けた。
  • ジェーン・シーモアはタロット占いで「3度結婚する」と予言され、1993年に4度目の結婚をしている。
  • ロジャー・ムーアは撮影中ブードゥー呪術医に「息子を持つ」「博愛主義者になる」と予言され、実際に「息子が生まれ」「ユニセフ親善大使」にもなる。
  • ジェフリー・ホールダーは撮影日にアレクサンドラ妃が見学していたこともあり、実際に生きたヘビの入った棺桶に倒れ込んだ。
  • 原作のフェリックス・ライターは、ミスター・ビッグに捕らわれ、サメに片手片脚を食いちぎられる。このシーンは本作では採用されなかったが、後に『消されたライセンス』で取り入れられた。
  • その『消されたライセンス』のライター役は、奇しくも本作でライターを演じたデヴィッド・ヘディソンであった。ライター役は作品ごとに異なっており、二度演じた俳優は彼とジェフリー・ライトのみである。
  • G.W.ペッパー保安官を演じたクリフトン・ジェームズは、次回作『黄金銃を持つ男』でも同じ役で出演している。

主題歌[編集]

ポール・マッカートニー&ウイングスが起用され、同タイトル曲を担当した[6]。イギリスの「ミュージック・ウィーク」誌では、最高位9位、アメリカの「ビルボード」誌では、最高位2位を獲得し、映画と共に大ヒットとなった。007の主題歌が英米両方のチャートでトップ10入りしたのは、この曲が初めてだった。楽曲はビートルズ時代に比べ、出来はよくなかった。また、映画のサウンドトラックは、プロデューサーのジョージ・マーティンが担当し、ビートルズ時代以来の共演となった。 同サウンドトラック・アルバムは、「ビルボード」誌アルバム・チャートでは、最高位17位だった。

ギャラリー[編集]

エピソード[編集]

  • ショーン・コネリーと同じセリフを避けるため、お酒は「バーボン氷なし」と頼む。
  • 同様に、これまでシャンパンはドン・ペリニヨンを愛飲していたのが、本作ではボランジェを注文。しかし、続く『黄金銃を持つ男』と『私を愛したスパイ』では再びドンペリに戻り、『ムーンレイカー』から正式にボランジェとのタイアップが始まる。
  • タロット・カードは、ファーガス・ホールの特製デザイン。。映像でも確認できるが、裏面の模様は数字の007を図案化したものである。
  • 撮影地は、ニューオーリンズ、ルイジアナの入江、ニューヨークモンテゴ・ベイジャマイカ)、パインウッド・スタジオなど。
  • ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港についたボンドは、迎えの車でイースト川沿いのFDRドライブを走行し、マンハッタン橋を過ぎた後、ウィスパーに襲われる。
  • ミスター・ビッグを追ってハーレムに行くシーンでは、実際に現地でも撮影。
  • カナンガ博士が元首を務める「サン・モニーク」は架空の国(カリブ海にある島国)である。ロケは大半がジャマイカで行われた。
  • サン・モニークでボンドの泊まるホテルのシーンは、モンテゴ・ベイのローズ・ホール・グレート・ハウスで撮影された。
  • ニューオーリンズでは、冒頭の葬式のシーンも含め、フレンチ・クオーターでロケが行われた。
  • ルイジアナの住人フロー・トレッドウェイの敷地を、ボートで横切るシーンに使う。ヘリコプターでロケハンをしていたスタッフが、空中から格好の場所として発見。着陸して、家から出てきたフローに使用の許可を依頼した。
  • Mとマネーペニーがボンドの自宅を訪ねるシーンが出てくるのは、本作が初めて(ボンドの自宅そのものは、『ドクター・ノオ』にも登場している)。
  • ボンドの自宅にあるエスプレッソ・マシンは、イタリア製。
  • ボンドがニューヨークに行くときに乗ったのはボーイング747
  • フェリックス・ライター(CIA)の使用する機器(オープンリール・テープレコーダーなど)は、同社製のものが使用されている。
  • 冒頭ガンバレルシークエンスに登場するボンドは、本作以降帽子を被らなくなる。
  • ボンドが蝶ネクタイをしていないのは『007は二度死ぬ』以来である。

日本語吹替[編集]

役名 俳優 TBS旧録版 TBS新録版 DVD/BD
ジェームズ・ボンド ロジャー・ムーア 広川太一郎
ソリテール ジェーン・シーモア 岡本茉利 玉川砂記子 日野由利加
ドクター・カナンガ / ミスター・ビッグ ヤフェット・コットー 内海賢二 後藤哲夫
ペッパー保安官 クリフトン・ジェームズ 滝口順平 宝亀克寿
ティー・ヒー ジュリアス・W・ハリス 田中康郎 佐々木誠二
サメディ ジェフリー・ホルダー 蟹江栄司 銀河万丈 西凜太朗
M バーナード・リー 今西正男 石森達幸 藤本譲
マネーペニー ロイス・マクスウェル 花形恵子 竹口安芸子 泉裕子
ライター デヴィッド・ヘディソン 伊武雅之 徳丸完 小島敏彦
ロージー グロリア・ヘンドリー 高島雅羅 岡のりこ
ストラッター ロン・サットン 玄田哲章 秋元洋介
クオーレルJr ロイ・スチュワート 平林尚三 玄田哲章 をはり万造
ウィスパー アール・ジョリー・ブラウン 亀井三郎 安西正弘
タクシー運転手 アーノルド・ウィリアムズ 千葉繁 谷口節
美女 マデリン・スミス 吉川なが子 横尾まり
店員 クビー・チェーザ 横尾まり 岡のりこ
ウェイター ダン・ジャクソン 田中幸四郎 笹岡繁蔵
エディ ランス・ゴードン 広瀬正志
カナンガの部下 田口昂 島香裕
漁師 大滝進矢 笹岡繁蔵
靴みがき 小比類巻孝一 小室正幸

※キングレコードから発売の特別版DVDにはTBS版の2バージョンの吹替を収録。

プロデューサー - 熊谷国雄、演出 - 佐藤敏夫、翻訳 - 木原たけし、選曲 - 重秀彦、効果 - 桜井俊哉/遠藤堯雄、調整 - 小野敦志、制作 - 東北新社/TBS、解説 - 荻昌弘
※ムーア時代から、日本での007作品テレビ初放映は延長枠が恒例となり、
カジノ・ロワイヤル」まで延長枠初放映が続いた。
(通常枠での初回放映となった「ユア・アイズ・オンリー」のみ例外)
プロデューサー - 上田正人、演出 - 小山悟、翻訳 - 木原たけし、制作 - 東北新社/TBS、解説 - 荻昌弘
  • DVD/BD版 - 初出、2006年11月22日発売 DVD アルティメット・コレクション
演出 - 福永莞爾、翻訳 - 佐藤一公、調整 - 金谷和美、制作 - 東北新社
  • 当初、ボンドの声は「セイント 天国野郎」でムーアの声を担当していた近藤洋介にオファーしたが、舞台出演の為、断念。前々作でレーゼンビーを吹き替えた経験のある広川が担当。以降、ムーアの吹替は広川の専任となった。

秘密兵器など[編集]

  • 強力な磁石を内蔵し、ベゼルの角の部分が丸鋸になるロレックスの腕時計サブマリーナ・5513を使用(後に実際にロジャー・ムーアが映画内で使用したサブマリーナがオークションに出さた)。これ以降、007映画が別な海外時計メイカーと契約するまで、ボンドが映画内でメインで使う腕時計は、ロレックス・サブマリーナ・5513がほぼ一貫して使われるようになった。この時計をQに修理に出していた間、ボンドはハミルトンのパルサーを着用していた[7][8][9]
  • その他の秘密兵器は、ヘアブラシ型無線機、盗聴探知機、サメ退治用圧縮ガス弾など。
  • 特殊装備を搭載したボンドカーは登場しないが、2階建てバスモーターボートを奪ってチェイスを繰り広げる。
    • ボート・チェイスのシーンでは、テキサス州の企業のボートを使用。ガラス繊維強化プラスチック製のボートだった。同社は本作用に26隻のボートを製造したが、うち「17隻がジャンプのテスト中に大破」した。
    • 劇中ではボンドが行ったことになっている、グラストロン・GT-150のジャンプは、110ft(約34m)の世界記録を出した[10]
  • その他の秘密兵器は、ヘアブラシ型無線機、盗聴探知機
  • S&W M29、8インチを終盤で使用。これは本作の2年前公開された『ダーティハリー』の影響が考えられる。

脚注/参照[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ ビッグコミックス 007 死ぬのは奴らだ 復刻版 LIVE AND LET DIE(2018年4月22日閲覧)
  2. ^ a b Live and Let Die” (英語). The Numbers. 2009年6月16日閲覧。
  3. ^ a b 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)312頁
  4. ^ 命がけで3匹のワニの上をポンポンポンと走り抜ける映画『007 死ぬのは奴らだ』のスタントが成功するまでのメイキング動画
  5. ^ Movie list by worldwide gross” (英語). WorldwideBoxoffice.com. 2009年6月16日閲覧。(第1位は『エクソシスト』、第2位は『スティング』)
  6. ^ Benitez, Vincent P. (2010). The Words and Music of Paul McCartney: The Solo Years. Santa Barbara, Calif.: Praeger. p. 50. ISBN 978-0-313-34969-0.
  7. ^ ボンドウォッチプロジェクト
  8. ^ Q Branch at Her Majesty's Secret Servant
  9. ^ James Bond Gadget Watch History at the watchismo times
  10. ^ History 1970'satGlastron Boats