2手目△3二飛

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将棋 > 将棋の戦法 > 振り飛車 > 三間飛車 > 2手目△3二飛

2手目3二飛(にてめ さんに ひ)は将棋の戦法の一つ。三間飛車の後手番が用いる指し方で、先手の初手▲7六歩に対して△3二飛と飛車を振る。

戦法の特徴[編集]

△持ち駒 なし
Shogi zhor 22.png
91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
98 88 78 68 58 48 38 28 18
99 89 79 69 59 49 39 29 19
Shogi zver 22.png
▲持ち駒 なし
図1 2手目△3二飛の基本形
△持ち駒 角
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91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
98 88 78 68 58 48 38 28 18
99 89 79 69 59 49 39 29 19
Shogi zver 22.png
▲持ち駒 なし
図2 2手目△3二飛戦法の進行例

先手が初手▲7六歩とした後、後手が石田流を目指した場合、従来は2手目で△3四歩とし、以降▲2六歩、△3五歩と進むが、研究が進んだ結果後手が作戦負けをすることが多かった[1]。そこで後手が2手目で3筋に飛車を振り石田流を目指す指し方が創案された(図1)。以降、▲2六歩、△6二玉、▲2五歩、△3四歩と進む。その局面で先手は▲2二角成△同銀の角交換から▲6五角と打ち(図2)馬を作ることが可能であり、従来はそれで後手不利とされていたが[2]、研究の結果、後手も指せることが分かり、2手目3二飛が新たな指し方としてプロに注目されることとなった。

先手側の対策としては3手目に▲9六歩と突くというものがあり[3]、△9四歩との交換は後手少し苦しいとの判断が定説である[4]。後手としては先手に▲9五歩と位を取らせることを許す展開となる。また、3手目に▲7七角と指し、相振り飛車を目指す対策もある。久保利明によると、2011年の時点で「先手が簡単によくなる順はない」という[5]

歴史[編集]

  • 創案者はアマチュアから三段リーグ編入試験で関西奨励会に編入した今泉健司[6]久保利明経由で関東に伝わる。谷川浩司は研究会で久保に指されたことによりこの指し方を知ったという[7]
  • 実戦では、長岡裕也が2007年12月11日の竜王戦6組で佐藤天彦を相手に公式戦で初めて用いた(結果は佐藤天彦の勝ち)[8]。その後、久保がA級順位戦で、羽生善治が朝日杯の準決勝で用いて注目を集めた[9]。この戦法により、今泉は奨励会員として初めて第35回升田幸三賞を受賞した。2010年の竜王戦決勝トーナメントで久保が丸山忠久相手に再度試みて千日手指し直し。久保が『久保の石田流』で本戦法を取り上げた2011年以降も研究・実戦例は続いており、新手も現れている。
  • 2011年の竜王戦1組で佐藤康光が2手目△3二飛から4手目△4二銀とする新手を見せて木村一基に勝利。佐藤康は2018年の竜王戦1組・5位決定戦 でも本戦法で糸谷哲郎に勝利している[10] 。2011年のA級順位戦では谷川浩司渡辺明を破る。2012年の王座戦第4局では羽生善治渡辺明に採用して千日手指し直しとなっている。
  • 2015年には土佐浩司[11]所司和晴に採用し勝利。2017年には福崎文吾[12]菅井竜也[13]が採用したが負けている。宮本広志島本亮に採用したが、飛車を自陣に封じ込められた状態が続き、作戦負けで敗勢になったが[14]、終盤の先手に見落としがあり逆転勝ちした。
  • 2018年には安用寺孝功[15]南芳一に用いたが負けている。 2019年には鈴木大介[16]が、井上慶太に使用している。

初手7八飛戦法[編集]

  • 初手7八飛戦法は久保利明が第66期(2016年度)王将戦の七番勝負で、郷田真隆王将との対局で試み勝利した。久保は第76期(2017年度)A級順位戦11回戦でも、深浦康市九段との対局で採用したが敗れている。
  • プロ棋士で最初に採用したのは真部一男とされる[17]。それ以外には、銀河戦で土佐浩司が採用し勝利、新人王戦で青嶋未来が採用している。
  • 2017年度は、山本博志(三段)[18]、王座戦で菅井竜也[19]、朝日杯で竹内雄悟[20]、順位戦で宮本広志[21]、棋聖戦で鈴木大介[22]、竜王戦で古森悠太[23]が試みている。
  • 門倉啓太も度々採用しており、「猫だまし戦法(初手の革命 7八飛戦法)」として「将棋世界」2013年 10月号で解説している[24]。最近では、西田拓也が用いることが多く、棋聖戦[25]はじめ10局以上(1千日手)の実践例がある[26]
  • 2018年には里見香奈[27]が島本亮に使用、佐々木慎[28]三枚堂達也に使用したがどちらも負け。佐々木も本戦法の採用が多い棋士であり、テレビ棋戦[29]でも視聴者に披露している。村田顕弘[30]にも数回の実践例がある。
  • 2019年には西山朋佳[31]が、本戦法を奨励会でよく使った山本博志に対し使用したが負けている。山本博志自身も[32]、三枚堂達也などに対して使用している。
  • 久保利明は第68期(2018年度)王将戦の七番勝負でも渡辺明に用いたが、左玉に構え右四間飛車に振り直し、陽動居飛車のような構想を見せた[33]

評価[編集]

  • 佐藤康光は、2手目3二飛は「論理的に不可能だと思っていた」と発言している[7]
  • 森内俊之は「コロンブスの卵的な大きな発見」と評している[7]
  • 藤井猛は「実はこの手は昔研究したことがある。」と発言している[34]

関連項目[編集]

出典・脚注[編集]

  1. ^ 『佐藤康光の石田流破り』12頁 - 24頁
  2. ^ 『久保の石田流』164頁
  3. ^ 『2手目の革新 3二飛車戦法』62頁
  4. ^ 『久保の石田流』174頁
  5. ^ 『久保の石田流』184頁
  6. ^ 『先崎学のすぐわかる現代将棋』128頁
  7. ^ a b c 『イメージと読みの将棋観』24頁
  8. ^ 『2手目の革新 3二飛車戦法』94頁
  9. ^ 将棋世界2008年4月号
  10. ^ 2018.5.29・第31期竜王戦1組 5位決定戦・対糸谷哲郎
  11. ^ 2015.4.7・第28期竜王戦 6組 昇級者決定戦・対所司和晴
  12. ^ 2017.3.14・第75期順位戦 C級1組 最終戦・対永瀬拓矢
  13. ^ 2017.9.1・第67期王将戦 二次予選 1回戦・対斎藤慎太郎
  14. ^ 2017.10.2・第59期王位戦 予選トーナメント「携帯中継」コメント
  15. ^ 2018.1.25・第31期竜王戦 5組 ランキング戦
  16. ^ 2019.1.18・第77期順位戦B級2組 8回戦
  17. ^ 日本将棋連盟・携帯中継(2018.1.24)鈴木大介対深浦康市・観戦記者コメント
  18. ^ 2017年4月12日新人王戦・阿部光瑠戦の携帯中継では、「山本三段は、奨励会の三段リーグでの採用もある」旨がコメントされている。
  19. ^ 2017.2.25・第65期竜王戦 二次予選・対千田翔太
  20. ^ 2017.8.22・第11回 一次予選・対藤井聡太
  21. ^ 2017.10.10・第76期C級1組 6回戦・対富岡英作
  22. ^ 2018.1.24・第89期 二次予選・対深浦康市
  23. ^ 2017.12.22・第31期竜王戦 6組 ランキング戦 1回戦・対藤原結樹アマ
  24. ^ 門倉が監修の「えとたま」第9話「花鳥歩月(かちょうふげつ)」にも本戦法の描写がある。
  25. ^ 2017.6.27・第89期 一次予選・対今泉健司
  26. ^ 第7期加古川青流戦・携帯中継(2017.8.29)
  27. ^ 2018.12.14・第32期竜王戦 6組 ランキング戦
  28. ^ 2018.5.4・第31期竜王戦 4組 ランキング戦
  29. ^ 2017.7.23放送・第67回 NHK杯戦 1回戦第17局・対阿久津主税
  30. ^ 2018.6.15・第90期棋聖戦 一次予選 2回戦・対山本真也ほか
  31. ^ 2019.1.14・第32期竜王戦 6組 ランキング戦
  32. ^ 2019.1.15・第50期新人王戦 本戦 2回戦
  33. ^ 2019.2.24~25・第68期王将戦 七番勝負第4局
  34. ^ 『イメージと読みの将棋観』25頁

参考文献[編集]