CAE

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CAE: computer aided engineering)は、コンピュータによって支援された、製品設計製造工程設計の事前検討などといったエンジニアリングの作業、あるいはそのツール等を指す場合もある。要素技術としては、シミュレーションコンピュータシミュレーション数値解析、などがある。

概要[編集]

製品の設計時の検討は、コンピュータが発達する以前は、工学便覧に載っているような簡易計算でおこなっており、実物ができるまでその設計の細かな良し悪しがわからなかった。そのため、量産品を作る前に試作品を作り、その際に製造方法の妥当性を検証したり、また耐久試験などを行って製品の性能が十分かを検証していた。このような方法では、コストリードタイムも多く必要とし、また試作できる回数も限られることから最適な設計の追求も十分ではなかった。

コンピュータ技術の進歩により、以下のようなニーズが高まっていった。

  • 設計のCAD化によって容易に作れるようになった製品データの、コンピュータ計算への再利用。
  • CAMの普及により複雑な形状加工が実現したが、従来の机上計算では予測困難な製品形状の性能予測の実施。
  • 製品に対する要求性能が高まり、最適な設計条件を求めることが必要となる。
  • 投資、リードタイム圧縮のために試作を廃止したり、回数を減らす必要が高まる。

上記ニーズを満たすツールとして、各種CAEツールが登場し、設計における事前検討行為の一つとして普及していった。また、微細加工などの分野では、実験での科学的なデータ収集が困難なものも多く、実験の事前検討としての使用ではなく、現象の理論的な考察に使用される事も多い。

CAE作業の流れ[編集]

CAEの作業のフローは、以下の順番で行う。

  1. 解析する現象を予測し、解析内容を決定する
  2. 解析条件の整理
  3. 必要なデータの収集、CADで作成
  4. プリプロセッサにて、解析用データを作成(計算格子の生成など)
  5. ソルバーを実行して、シミュレーションを行う
  6. ポストプロセッサにて結果を分析

その結果を分析して実物を作る前に設計の妥当性、性能試験、最適形状や最適条件を検討して、製品の問題点の洗い出しを行う。必要に応じてこのフローを何回か回し、目標性能を達成させて製品設計を推進する。最後に試作品にてCAE結果の妥当性を確認して、量産品製造に着手する。業界によっては量産前の試作品を全く作らずに、CAE結果をもって量産品着手を行うことも多い。

解析手法[編集]

以下の3つが代表的である。

主な適用分野[編集]

CAEの適用分野は機械工学電気工学電子工学建築工学土木工学化学工学など多岐に渡る。

主なメーカー[編集]

  • TOYOTA SYSTEMS - TopCAST(鋳造シミュレーションソフトウェア)[1]を開発・販売している。
  • MSC Software英語版 - 2015年、溶接解析および積層造形のSimufact社を買収し[2]、2016年、流体解析のSoftware Cradle社を買収した[3]。2017年、ヘキサゴン社に買収された。
  • Dassault Systèmes - 2005年、Abaqus英語版社 (後のDassault Systèmes Simulia社) を買収し[4]、2006年、1D-CAEのDynasim社を買収し、2011年、複合材解析のSimulayt社を買収し、2013年、SFE社を買収し、2016年、CST社を買収し、同年、流体解析のNext Limit Dynamics (Next Limit Technologies英語版子会社) を買収し[5]、2017年、Exa Corporationを買収した。
  • ANSYS - 2003年、流体解析のCFX社を買収し、2006年、流体解析のFluent社を買収し、2008年、電磁界解析のAnsoft社を買収し、2017年、積層造形の3DSIM社を買収し、2018年、光学解析のOPTIS社を買収した。
  • Autodesk - 2008年、射出成形のMoldflow英語版社を買収し、2009年、構造解析および流体解析のALGOR社英語版を買収した。
  • シーメンス - 2007年、UGS社 (現Siemens PLM Software英語版) を買収し、2011年、複合材解析のVistagy英語版社を買収し、2012年、LMS Internationalを買収し、2016年、CD-adapco社を買収し、2017年、Mentor Graphics社を買収し、同年、電磁界解析のInfolytica社を買収した。
  • Altair Engineering - 2006年、構造解析のMECALOG社を買収し、2011年、流体解析のACUSIM Software社を買収し、2014年、電磁気解析のEM Software & Systems社を買収し、2017年、複合材解析のComponeering社を買収し、2018年、GPU流体解析のFluiDyna社および構造解析のSIMSOLID社を買収した。
  • ESI Group英語版 - 2011年、電磁界解析のEfield社を買収し、2013年、1D-CAE「CyModelica」開発元であるCyDesign Labsを買収し、2015年、AMOEBA社より流体解析のPRESTOを買収し、同年、流体解析のCiespace社の資産を買収し[6]、2016年、1D-CAEのITI社を買収し、2017年、オープンソースソフトウェア「Scilab」(1D-CAEモジュールのXcosを含む) の開発元Scilab Enterprisesを買収した。
  • NUMECA Internationalイタリア語版 - 2018年、流体解析のFlowkit社を買収した。
  • COMSOL英語版 - 1986年、KTHの大学院生3名で創業、1996年、MATLABの物理シミュレーションアドオンPDE Toolbox発売、1998年、FEMLAB発売、2005年、製品名をCOMSOL Multiphysicsに変更した。
  • AMPS Technologies
  • 株式会社アライドエンジニアリング - 1981年創業。構造解析ソフトウェア「ADVENTURECluster」を開発する。SCSKの子会社。
  • 株式会社計算力学研究センター
  • 株式会社くいんと - 1985年創業。構造最適設計ソフトウェア「OPTISHAPE」等を開発する。
  • 株式会社先端力学シミュレーション研究所 - 1999年創業の理研ベンチャー。創業者は牧野内昭武
  • アドバンスソフト株式会社
  • 株式会社科学技術研究所
  • ムラタソフトウェア株式会社 - 設計者向けCAEソフトウェア「Femtet」を開発する。村田製作所の子会社。
  • ファンクションベイ株式会社
  • プロメテック・ソフトウェア株式会社 - 2004年創業の東大発ベンチャー。粒子法流体解析ソフトウエア「Particleworks」や粉体解析ソフトウェア「Granuleworks」を開発する。
  • 株式会社JSOL - 電磁界解析ソフトウェア「JMAG」を開発する。

主な解析の種類[編集]

(括弧内はCAEソフト)

  • 構造解析(Advance/FrontSTR、MSC Nastran、ANSYS、SIMULIA Abaqus、ANSYS Discovery Live、AMPS Designer、MPACT、CATIA Analysis、MSC SimDesigner、MSC Apex Structures、シーメンスNX、LMS Virtual.Lab Structures、ADVENTURECluster、Femtet、Altair RADIOSS、Altair Opti Struct、Autodesk Fusion 360、PTC Creo Simulate (旧Pro/Mechanica)、Autodesk Nastran英語版 In-CAD、SIMSOLID、COMSOL Multiphysics英語版

 ※NX、Fusion 360など、最近の3D CADシステムには線形領域での構造解析機能を持ったものも多く、設計者自らが思考の過程でCAE結果を参考にすることが可能となっている.

  • 応力解析(Advance/FrontSTR、MSC SimDesigner、MSC Fatigue、ANSYS、CATIA Analysis、AMPS Designer、SIMULIA Abaqus、Femtet、Altair OptiStruct、Autodesk Fusion 360、COMSOL Multiphysics英語版
  • 振動解析(SIMULIA Abaqus、ANSYS、MSC Nastran、LMS Virtual.Lab Noise and Vibration、CATIA AnalysisシーメンスNX、PERMAS、Altair OptiStruct、COMSOL Multiphysics英語版
  • 超音波解析(ComWAVECOMSOL Multiphysics英語版)
  • 音響解析(Advance/FrontNoise、WAON、LMS Virtual.Lab Acoustics、LMS SYSNOISE Auto-SEA、ANSYS、Femtet、FINE/Acoustics、COMSOL Multiphysics英語版、Altair OptiStruct)
  • 衝撃解析(Pam-Crash、LS-DYNA、SIMULIA Abaqus、Altair RADIOSS、AMPS Designer、Autodesk Nastran英語版 In-CAD)
  • 流体解析OpenFOAM、Advance/FrontFlow/red、FrontFlow/Blue、STAR-CD、FLOW-3D、ANSYS Fluent、ANSYS CFX、ANSYS Discovery AIM (旧ANSYS AIM)、ANSYS Discovery Live、STREAM、SCRYU/Tetra、PHOENICS、Pam-Flow、CFD-ACE+英語版CFD-FASTRAN英語版、ESI-PRESTO、DYNAFLOW、シーメンスNX、PowerFlow、e-flow、Particleworks、MPS-RYUJIN、Altair AcuSolve、ultraFluidX、nanoFluidX、KeyFlow、SIMULIA XFlow、SOLIDWORKS Flow Simulation、Autodesk CFD、FloEFD、FINE/Turbo、FINE/Open with OpenLabs、FINE/Marine、OMNIS/LB、FINE/FSI-OOFELIE、COMSOL Multiphysics英語版
  • 粉体解析(Granuleworks、EDEM、Rocky DEM)
  • 電磁場解析(PHOTO-Series、MagNet、JMAG、PAM-CEM、Efield Solution、ANSYS、ANSYS HFSS、Femtet、CST MW Studio、PoyntingCOMSOL Multiphysics英語版、OOFELIE::Multiphysics、PetaMagnetic、Altair FEKO)
  • 電磁波解析 (KeyFDTD、MAGNA/TDM、Altair FEKO、COMSOL Multiphysics英語版)
  • 光学解析 (SPEOS、CODE V、LightTools、Zemax OpticStudio、Lumicept (旧INSPIRER)、TracePro、ASAP、Optica Optics Software英語版COMSOL Multiphysics英語版)
  • 機構解析(MSC Adams、LMS Virtual.Lab Motion、LMS DADS、FunctionBay RecurDyn、シーメンスNX、Altair MotionSolve、COMSOL Multiphysics英語版
  • 圧電解析(ANSYS、Femtet、COMSOL Multiphysics英語版、OOFELIE::Multiphysics、PZFlex英語版
  • 半導体解析、バイポーラトランジスタ、FET、IGBT、GaN(COMSOL Multiphysics英語版
  • MEMS/NEMS/マイクロフルイディクス/MicroTAS解析(COMSOL Multiphysics英語版
  • 化学反応解析(COMSOL Multiphysics英語版
  • 電気化学解析(COMSOL Multiphysics英語版
  • プラズマ解析、CVD(COMSOL Multiphysics英語版
  • Li-ion電池・全固体電池・燃料電池解析(COMSOL Multiphysics英語版
  • 腐食・めっき解析(COMSOL Multiphysics英語版PetaMagnetic
  • 溶接解析 (Simufact Welding、Virfac Welding Designer)
  • 複合材解析 (FiberSIM、Altair ESAComp、CATIA Composites Fiber Modeler、SOLIDWORKS Simulation Premium、MSC Apex[7]COMSOL Multiphysics英語版)
  • 騒音・振動・ハーシュネス (NVH) 解析 (Altair NVH Director、SFE AKUSMOD)
  • 1次元解析 (SimulinkDymola英語版Simcenter Amesim英語版SimulationX英語版、CyModelica、MapleSim英語版Wolfram SystemModelerOpenModelica英語版Scilab)
  • 着氷解析 (ANSYS FENSAP-ICE)

金型分野への適用も非常に多い

  • 樹脂金型・樹脂流動解析(3D TIMON、Autodesk Moldflow、SIMPOE、Moldex3D)
  • プレス金型(Pam-Stamp、JSTAMP-Works、AutoForm、DYNAFORM、Altair RADIOSS、Altair HyperForm)
  • 鋳造金型(ADSTEFAN、MAGMASOFT、Procast、ConiferCast、JSCAST、CAPCAST、Pam-Cast、AnyCASTING、Click2Cast)
  • 砂ブロー造型金型(ArenaFlow)
  • 鍛造金型(Simufact Forming (旧MSC.SuperForge)、DEFORM、FORGE3、Altair HyperForm)

積層造形 (Additive Manufacturing) 向けのものも登場した

  • 積層造形 (Autodesk Netfabb、Virfac Additive Manufacturing、Amphyon、ANSYS Additive Print、ANSYS Additive Suite (3DSIM exaSIMの後継[8])、Simufact Additive)

農業分野への応用も始った

  • 施設園芸園芸施設内熱気流解析(KeyAGri)

地球物理、土木、地下水流分野への適用もある

  • ジオメカニクス、地下水流解析(COMSOL Multiphysics英語版

バイオテクノロジー医用工学分野への適用

  • バイオ、メディカル解析(COMSOL Multiphysics英語版

食品分野への適用

  • 伝熱解析、熱流体解析、フリーズドライ、マイクロ波加工(COMSOL Multiphysics英語版

脚注[編集]

関連項目[編集]