ファブリー病

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ファブリー病(ファブリーびょう、: Fabry disease)は、ファブリ病とも呼ばれる、ライソゾーム病(指定難病19)の一つ。細胞内リソソーム(ライソゾーム)酵素の1つであるα-ガラクトシダーゼ A(α-gal A、α-Gal A)の活性が欠損・もしくは低下して生じる遺伝性の疾患で、糖脂質代謝異常病である。X連鎖遺伝形式の遺伝病であり、患者のほとんどは男性だが、女性でも発症することがある。全身の細胞糖脂質が蓄積するため、幼児期に手足の鋭い痛み、無汗、臀部や陰部の発疹などの症状により発見される場合があるが、発見が遅れたり適切な治療が行われないと青年期から中年期になり、腎症状、心症状、脳の症状が出現するなど、より重症化する[1]

概要[編集]

ファブリー病は1898年にドイツ人皮膚科医のヨハネス・ファブリー(Johannes Fabry)とイギリス人皮膚科医のウィリアム・アンダーソン(William Anderson)により別々に、「びまん性体幹皮角血管腫」として報告された[2][3]。ライソゾーム内の遺伝的水解酵素の欠損又はライソゾームの機能障害を来す遺伝子の異常により発症するので、先天代謝異常疾患の総称である「ライソゾーム病」として特定疾患に指定された(指定難病19)[4]

細胞内でα-ガラクトシダーゼ A酵素が欠損すると、体内の細胞内に不要な糖脂質「GL-3(グロボトリアオシルセラミド、セラミドトリヘキソシド; CTH)」が蓄積されるため、進行的な組織障害が起こり、多彩な臨床症状を呈する[3]

2013年5月、福岡大学熊本大学の共同研究班は、ファブリー病の有病率がおよそ7000人に1人であることが判明したと発表した。それまでは欧米での調査を基に4万人に1人とされていた[5]

徴候や症状は様々であり、病気の進行も個体差がある。小児期の診断は困難で、患者多くが成人期に心臓、腎臓の異常をきっかけに診断されている[1]

分類[編集]

X染色体劣勢遺伝形式をとる遺伝子疾患。女性では発症しにくいが、ヘテロ接合体の女性はキャリアの場合と患者の場合がある。男性の場合は異常なX染色体を補う遺伝子がY染色体に存在しないため発症しやすいとされている[6]

古典型(男性)[編集]

1898年にドイツの皮膚科医であるヨハネス・ファブリーが最初に報告した古典的ファブリー病で、「ファブリー病の症状」が、ほとんど全て出現するα-ガラクトシダーゼの酵素活性はほとんどない

亜型(男性)[編集]

最近明らかになったものであり、主に心臓の筋肉に糖脂質が溜まり、心肥大、拡張型心筋心筋症となり、心不全や不整脈をおこす。心型亜型は、古典的ファブリー病と区別して、心ファブリー病と呼ばれている。他に、腎型亜型、CNS亜型もある[2]

ヘテロ接合体(女性)[編集]

男性患者と同様の重篤な症状を示す人から、ほとんど症状を示さない人まで様々だが、年齢が進むと多くの人に何らかの臓器障害臓器障害(心臓、腎臓、神経など)が出現すると言われている。痛みやかゆみはなく、小児期より出現することが多い。

症状[編集]

症状などにより古典型、亜型、ヘテロ接合体の3つに分類される[3]

腎臓[編集]

  • 腎機能障害(蛋白尿)[3]

心臓[編集]

神経[編集]

  • 聴覚低下、四肢疼痛、脳血管障害、うつ症状[3]>

[編集]

  • 角膜混濁[3]

皮膚[編集]

  • 被角血管腫、低・無汗症[3]

消化器[編集]

診断[編集]

上述の、ファブリー病特有の各臓器の症状から判断し、酵素活性検査や遺伝子検査により診断する[1]血液か、尿中のα-ガラクトシダーゼ A(α-gal A)活性を測定し、欠損または低下が認められる。障害が予想される臓器(皮膚、腎臓、心臓など)の細胞を採取し、顕微鏡で異常のあるなしを確認。特に女性患者は、酵素活性のみでは診断できない場合がある。この場合は血液や皮膚の細胞を使って、遺伝子診断を行う[3]。後述の経口投与薬を用いる場合、遺伝子診断は必須となる。

治療[編集]

酵素補充療法(ERT)[編集]

腎機能や心機能の改善などが認められるものの、完全な治癒は困難とされる[1]。体内で足りないα-ガラクトシダーゼ(α-GAL)を補充することで、症状の改善や病気の進行をおさえることができる。日本で承認されている遺伝子組換え製剤は2種類ある。1回体重1kgあたり0.2mgを隔週、点滴静注する。8歳から治療可能。

  • アガルシダーゼ アルファ(リプレガル)
  • アガルシダーゼ ベータ(ファブラザイム、BS

※酵素補充療法は病状が進行している場合には治療効果が期待できず、重症化した心機能低下や腎不全に陥った場合は、心臓ペースメーカーやバイパス手術、血液透析、腎移植などが必要となる[1]

経口投与薬[編集]

スフィンゴ糖脂質の末端ガラクトースの類似体を投与することで、変異型α-Gal Aに結合、立体構造の安定性を増し、α-Gal Aのリソソームへの適切な輸送を促進し、リソソームにおけるα-Gal A活性を上昇させる薬理学的シャペロンとして作用する[7][8]。世界初の経口投与薬は、日本で2018年5月30日に発売となった。16歳以上が治療可能で、GFRの検査が必要となり、酵素補充療法中止後2週間後から服用ができ、妊娠を希望する女性に対しては、服用開始後数年は妊娠できないことを説明する必要がある[9]

  • ミガーラスタット(ガラフォルド)
  • 適応はミガーラスタットに反応性のあるGLA遺伝子変異を伴うファブリー病。採血、遺伝子検査[10]を行い、「ガラフォルドに反応性のあるGLA変異一覧表」[11]に掲載されたGLA変異が対象となる
  • 販売名は、α-Gal酵素の折りたたみ(fold)構造を矯正するというメカニズムに由来[12]
  • 隔日投与で、1回投与量の薬価は142,662.1円。
  • 日本法人が2016年11月に設立したAmicus Therapeutics英語版社にとって第1号製品でもある[13]

対症療法[編集]

症状を緩和させる[2]

  • 疼痛 - ジフェニルビダントイン(フェニトイン)、カルバマゼピン
  • 伝導障害 - 抗不整脈薬
  • 腎障害 - ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬、ARB(アンジオテンシンll受容体拮抗薬)
  • 末期腎不全 - 腎移植、血液透析

消化器症状、中枢神経症状に対して、症状にあわせて薬物療法が行われる。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g 国立成育医療研究センター ファブリ―病”. 2018年12月21日閲覧。
  2. ^ a b c ファブリー(Fabry)病KOMPAS(慶応義塾大学病院)
  3. ^ a b c d e f g h i j ファブリー病 順天堂大学医学部付属順天堂医院 腎・高血圧内科
  4. ^ ライソゾーム病(指定難病19)難病情報センター
  5. ^ ファブリー病 7000人に1人 定説の「4万人」大幅超え(西日本新聞)
  6. ^ ファブリー病ひろば 大日本住友製薬
  7. ^ ファブリー病治療剤「ガラフォルドⓇカプセル123mg」の日本国内における製造販売承認取得について”. PR RIMES (2018年3月23日). 2018年12月5日閲覧。
  8. ^ 日本初、ファブリー病の経口治療剤”. 日経メディカル (2018年6月8日). 2018年12月5日閲覧。
  9. ^ 世界初のファブリー病経口治療薬が登場。”. CareNet (2018年7月27日). 2018年12月5日閲覧。
  10. ^ 精密検査施設一覧 - 日本先天代謝異常学会
  11. ^ GALAFOLD GLA Mutation Search - Amicus Therapeutics
  12. ^ ガラフォルド カプセル123mg インタビューフォーム 2018年5月作成(第2版)
  13. ^ 【新製品】日本初の経口ファブリー病薬、日本市場に第1号製品投入‐約10人のMRで情報提供 アミカス・セラピューティクス日本法人”. 薬事日報 (2018年6月1日). 2018年12月5日閲覧。

関連項目[編集]