J/FPS-3

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J/FPS-3の遠距離用アンテナ

J/FPS-3は、防衛庁(現:防衛省技術研究本部が開発し、航空自衛隊レーダーサイトで運用されている固定式警戒管制レーダー装置(3次元レーダー[1]三菱電機製。7ヶ所に配備が行なわれた[2]

概要[編集]

遠距離用と近距離用の2種類の空中線装置(アンテナ)からなる回転式のアクティブ・フェーズドアレイレーダー。信号処理装置などは地下に設置されており、抗堪性を向上させている[1][2]日本で開発、実用化した初めてのアクティブ・フェーズドアレイレーダーである。遠距離用は2次元(方位仰角)、近距離用は1次元の電子走査方式で、1,000個を超える素子アンテナ毎に半導体マイクロ波送受信モジュールを有する。

2008年度から、ミサイル防衛に対応するために弾道ミサイルを追尾するための能力向上が行われ、2009年度までに全てがJ/FPS-3改に改修されている[3]

擬似電波発生装置(デコイ)より囮電波を発生させ、電波ホーミング・ミサイル(対レーダーミサイル)を妨害する電子戦にも対応している[1]。また、光ファイバーケーブルを用いた遠距離・高速・大容量データ伝送技術を警戒管制レーダーで初めて採用[脚注 1]し、レーダーアンテナとオペレーションルーム等を隔離する事により、要員・器材の安全確保を可能とした。

来歴[編集]

防衛庁(当時)技術研究本部第1研究所第4部レーダー研究室[脚注 2]では、三菱電機[脚注 3]と共同で1967年(昭和42年)よりアクティブ素子の研究を進めており[4]1968年(昭和43年)度には予算も認可され[5]1971年(昭和46年)度には初の実験機であるXバンドの「電子走査アクティブ空中線装置」が試作された。

続いて1972年73年度(昭和47~48年度)にかけてSバンドの「新方式レーダ(その1)」が、1975年76年度(昭和50~51年度)にかけてXバンドの「新方式レーダ(その2)」が順次に研究試作された[4]

そして1979年(昭和54年)度からは、航空自衛隊の自動警戒管制組織の基幹センサーとなる次期警戒管制で運用されていたJ/FPS-1の後継となる3次元レーダーに関して、東芝日本電気[脚注 4]、三菱電機の参加・協力の下、技術研究本部によって部内研究が始まった。

1979年から東芝日本電気、三菱電機の参加・協力の下、技術研究本部によって部内研究が始まった。1983年11月、試作機製作会社が三菱電機に決定し、XJ/FPS-3の名称が与えられ、官民一体となって設計・製造を行った。

1986年10月から第2研究所(現:電子装備研究所)飯岡支所で試作機の据え付け調整工事が開始され、並行して技術試験を実施し、1987年7月からは同時に航空実験団(現:航空開発実験集団)電子実験隊の次期レーダー試験評価隊が実用試験を行い、1988年9月に終了した。その後1990年度まで試験運用を行い、1991年に制式化された。

開発経費は43億円とされる[6]

2018年、三菱電機はタイ王国軍が更新を予定する防空レーダーの入札に、タイ軍側の要求に合わせたJ/FPS-3のダウングレード版で応札[7]したが失注し、タイ王国軍はスペインのインドラ・システマススペイン語版社の三次元レーダを購入した[8]

2020年、フィリピン空軍の防空レーダーの入札にJ/FPS-3の改良版が落札されたと報道された[9]。3月4日に落札通知が発行され、契約額は55億ペソ(1億300万ドル)で60日以内に契約調印の予定という。3台の固定式と1台の移動式レーダーシステムを供給する。2021年後半から2022年に配備予定。

歴史[編集]

  • 1979年(昭和54年)度 - 部内研究開始
  • 1986年(昭和61年)度 - 技術試験開始
  • 1987年(昭和62年)度 - 実用試験開始
  • 1988年(昭和63年)度 - 技術・運用試験終了
  • 1989年(平成元年)度 - 設計・製造着手
  • 1995年(平成7年)度 - 第45警戒群で運用開始
  • 2008年(平成20年)度 - 加茂・笠取山・脊振山のJ/FPS-3能力向上[10]
  • 2009年(平成21年)度 - 当別・大滝根山・輪島・経ヶ岬のJ/FPS-3能力向上

配備[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 光ファイバーケーブルが「標準装備」で初めて採用されたのはJ/FPS-3だが、空自の警戒管制レーダーで最初に光ファイバーケーブルが採用されたのは、正確には根室分屯基地(第26警戒隊)のJ/FPS-2である。同基地ではオペレーションルームとレーダータワーが離れているため、信号の伝送ロスと接地電位のアンバランスが問題となり、何らかの対策が求められた。こうした同基地特有の特殊事情に対応するため、同時期に長ケーブルの製造実用化が始まった光ファイバーに着目し、住友電工に発注して採用に至った。オペレーションルームとレーダータワーの双方に信号/光変換部を設け、その間を光ファイバーで接続し、信号伝送ロスと接地電位の問題を一気に解決した。
  2. ^ 1987年(昭和62年)度の組織改編で第2研究所に移管された。また、第2研究所は2006年(平成18年)度の組織改編で電子装備研究所に改称した
  3. ^ 三菱電機(MELCO)社は、空自の3次元レーダーであるJ/FPS-1海上自衛隊の2次元対空捜索レーダーであるOPS-11の主製作社であった
  4. ^ 日本電気(NEC)社は、パッシブ・フェーズドアレイ・レーダーである空自用のJ/FPS-2、海自用のOPS-12の主制作社であった

出典[編集]

  1. ^ a b c 自衛隊装備年鑑 2006-2007 朝雲新聞社 P461
  2. ^ a b 北の空を睨む!新時代を迎える空自の固定式警戒管制レーダー BMD探知!ステルス機対応! 小林晴彦 軍事研究 2012年5月号 株式会社ジャパン・ミリタリー・レビュー P64-73
  3. ^ J/FPS-3()機能付加(BMD) (PDF) (平成22年度 行政事業レビューシートの公表(事業番号0360)) 防衛省
  4. ^ a b 防衛庁技術研究本部五十年史」防衛庁技術研究本部、平成14年11月、246-247頁
  5. ^ 藤木平八郎「自衛艦の技術レベルを検証する」『世界の艦船』第650号、海人社、2005年11月、 106-111頁。
  6. ^ 参考資料 -自衛隊の現状と課題- (PDF) 防衛庁、2004年7月13日、28頁
  7. ^ 三菱電機:タイ軍の入札に参加 国産防空レーダー - 毎日新聞
  8. ^ Indra wins contract to supply state-of-the-art Lanza 3D Radar to the Royal Thai Air Force
  9. ^ “Japanese firm bags P5.5-B PH Air Force air defense radar project”. INQUIRER.net. (2020年3月9日). https://globalnation.inquirer.net/186045/japanese-firm-bags-p5-5-b-ph-air-force-air-defense-radar-project 
  10. ^ 弾道ミサイル防衛 (PDF) 防衛省、2008年3月、11頁

関連項目[編集]