OPS (野球)

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OPS(オプス、オーピーエス)は On-base plus slugging の略であり、野球において打者を評価する指標の1つ。出塁率長打率とを足し合わせた値である。

概要[編集]

セイバーメトリクスの祖、ビル・ジェームズがディック・クレイマー、ピート・パーマーと共同開発した指標である。開発の契機は、得点の多い方が勝つという野球のルールにおいて、攻撃のランキングが常に打率順で掲載されていることに彼らが疑問を持っていたことに始まる[1]

OPS[編集]

このように生まれたOPSのメリットは、比較的簡単に求められる数値でありながら、得点との相関性が高い点にある。2000年から2004年のMLBのデータを基にすると、各指標の得点との相関係数は打率が0.849、出塁率が0.910、長打率が0.913なのに対し、OPSは0.955にも達する[2]。日本でも1980年から2010年のデータで得点と打率との相関係数が0.776なのに対し、OPSとの相関係数は0.941に達している[3]

このような得点との相関関係の強さと簡単な算出方法ゆえにメジャーリーグで2000年代以降普及し、現在では打者成績の公式記録に採用されている。

日本プロ野球でもその相関関係の強さが証明されており[3]2006年よりヤクルト監督に就任した古田敦也が前年にリーグ最高のチーム打率ながら最少得点に終わった打線を強化するため、出塁率と共にOPSを重視することを明言した他、2009年広島東洋カープ監督のマーティ・ブラウンがOPSを重視した打線を組むと公言したことで注目され[4]、米国球界経験者のG.G.佐藤は西武ライオンズとの契約でOPSに応じた出来高を導入した[5]

2013年のMLBでは、全選手の打撃成績を合計した際のOPSは.714であった[6]。リーグ別では、DH制有りのアメリカンリーグが.725、DH制無しのナショナルリーグが.703である[7][8]

Adjusted OPS+[編集]

シーズンやリーグの違う選手同士を比較する場合、リーグ平均からの傑出度を測るOPS+が有用である。 OPS+は平均に対する得点力の大きさをパーセンテージで表している。OPS+が100の打者は平均的であり、OPS+が150の打者は平均より50%高い得点力を持つ[9]

もしくは

  • OPS+=100×(出塁率÷リーグ出塁率*+長打率÷リーグ長打率*-1)

 リーグ出塁率*:パークファクター補正されたリーグ出塁率
 リーグ長打率*:パークファクター補正されたリーグ長打率

OPSによる格付け[編集]

OPSの開発者であるビル・ジェームズは、OPSを用いて以下のように打者をAランクからGランクまでの7段階に格付けできるとしている[10]

ランク 評価 OPSの範囲
A 素晴らしい .9000以上
B 非常に良い .8334 - .8999
C 良い .7667 - .8333
D .7000 - .7666
E 平均以下 .6334 - .6999
F 悪い .5667 - .6333
G 非常に悪い .5666以下


OPSの注意点[編集]

打者のタイプの違いを表す指標ではないこと
二つの数値を足すため「長打はないが出塁率が高い」打者なのか、「出塁率は低いが当たれば大きい」打者なのかは読み取れない。これに対し、米国のメディアは打率、出塁率、長打率の3指標を「打率/出塁率/長打率」と一まとめにして記載することで問題を解決している。さらに詳しく選手の性質を知りたい場合はBatted BallPITCHf/x等のデータを利用する。
走塁能力に直結する指標ではないこと
OPSでは選手が出塁した後の進塁・盗塁の成否は問われない。そのため選手の走塁能力を充分に反映した指標とは言えないが、走塁能力によって長打の数が増えたり内野安打になったりするので、走塁能力もある程度はOPSに反映される。
出塁が過小評価されていること
得点期待値からプレーの得点価値を算出するLinear Weights[11]と比較すると、出塁能力が過小評価されている問題点がある[12]。OPSとチーム得点の相関は非常に高いものの、より正確に打者としての総合力や貢献度を測る指標としてLinear Weightsに基づいたwOBA(Weighted On-Base Average)等が存在する[13]。しかし、前述したとおり各指標の得点との相関係数は打率が0.849、出塁率が0.910、長打率が0.913なのに対し、OPSは0.955にも達したことから、「野球ファンに広く知られている簡単な指標という点では有用[14]」と結論付けている。

OPSに関する記録[編集]

日本プロ野球[編集]

※出塁率は1985年以降現在に至るまで採用されている方法によって計算[15]

通算記録[編集]

順位 選手名 OPS
1 王貞治 1.080
2 松井秀喜 .996
3 アレックス・カブレラ .990
4 落合博満 .987
5 タフィ・ローズ .940
6 張本勲 .9334
7 中西太 .9325
8 小笠原道大 .929
9 ブーマー・ウェルズ .927
10 松中信彦 .925
  • 2020年シーズン終了時点、通算4000打数以上の選手を対象

シーズン記録[編集]

順位 選手名 所属球団 OPS OPS+[16] 記録年 備考
1 王貞治 読売ジャイアンツ 1.293 251 1974年 セ・リーグ記録
2 ランディ・バース 阪神タイガース 1.258 235 1986年
3 王貞治 読売ジャイアンツ 1.255 263 1973年
4 落合博満 ロッテオリオンズ 1.244 211 1985年 パ・リーグ記録
5 ウラディミール・バレンティン 東京ヤクルトスワローズ 1.234 237 2013年
6 落合博満 ロッテオリオンズ 1.232 217 1986年
7 アレックス・カブレラ 西武ライオンズ 1.223 234 2002年
8 王貞治 読売ジャイアンツ 1.211 243 1967年
9 王貞治 読売ジャイアンツ 1.210 261 1966年
10 王貞治 読売ジャイアンツ 1.204 205 1976年
  • 2020年シーズン終了時点

メジャーリーグベースボール[編集]

通算記録[編集]

順位 選手名 OPS OPS+
1 ベーブ・ルース 1.164 206
2 テッド・ウィリアムズ 1.116 190
3 ルー・ゲーリッグ 1.080 179
4 バリー・ボンズ 1.051 182
5 ジミー・フォックス 1.038 163
6 ハンク・グリーンバーグ 1.017 158
7 ロジャース・ホーンスビー 1.010 175
8 マイク・トラウト 1.000 176
9 マニー・ラミレス .996 154
10 マーク・マグワイア .982 163
  • 2020年シーズン終了時点、通算3000打席以上の選手を対象[17]
Adjusted OPS+ 通算記録[編集]
順位 選手名 Adjusted OPS+
1 ベーブ・ルース 206
2 テッド・ウィリアムズ 190
3 バリー・ボンズ 182
4 ルー・ゲーリッグ 179
5 マイク・トラウト 176
6 ロジャース・ホーンスビー 175
7 ミッキー・マントル 172
8 ダン・ブローザース 170
8 ジョー・ジャクソン 170
10 タイ・カッブ 168
  • 2020年シーズン終了時点[18]

シーズン記録[編集]

順位 選手名 所属球団 OPS OPS+ 記録年 備考
1 バリー・ボンズ サンフランシスコ・ジャイアンツ 1.422 263 2004年 ナ・リーグ記録
2 ベーブ・ルース ニューヨーク・ヤンキース 1.382 255 1920年 ア・リーグ記録
3 バリー・ボンズ サンフランシスコ・ジャイアンツ 1.381 268 2002年
4 バリー・ボンズ サンフランシスコ・ジャイアンツ 1.379 259 2001年
5 ベーブ・ルース ニューヨーク・ヤンキース 1.358 239 1921年
6 ベーブ・ルース ニューヨーク・ヤンキース 1.309 239 1923年
7 テッド・ウィリアムズ ボストン・レッドソックス 1.288 235 1941年
8 バリー・ボンズ サンフランシスコ・ジャイアンツ 1.278 231 2003年
9 ベーブ・ルース ニューヨーク・ヤンキース 1.258 225 1927年
10 テッド・ウィリアムズ ボストン・レッドソックス 1.257 233 1957年
  • 2020年シーズン終了時点[19]
Adjusted OPS+ シーズン記録[編集]
順位 選手名 所属球団 Adjusted OPS+ 記録年 備考
1 バリー・ボンズ サンフランシスコ・ジャイアンツ 268 2002年 ナ・リーグ記録
2 バリー・ボンズ サンフランシスコ・ジャイアンツ 263 2004年
3 バリー・ボンズ サンフランシスコ・ジャイアンツ 259 2001年
4 フレッド・ダンラップ セントルイス・マルーンズ 256 1884年
5 ベーブ・ルース ニューヨーク・ヤンキース 255 1920年 ア・リーグ記録
6 ベーブ・ルース ニューヨーク・ヤンキース 239 1921年
6 ベーブ・ルース ニューヨーク・ヤンキース 239 1923年
8 ロス・バーンズ シカゴ・ホワイトストッキングス 235 1876年
8 テッド・ウィリアムズ ボストン・レッドソックス 235 1941年
10 テッド・ウィリアムズ ボストン・レッドソックス 233 1957年
  • 2020年シーズン終了時点[20]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ マイケル・ルイス著「マネーボール」124-127ページ(邦訳・文庫版)
  2. ^ 李啓充 MLBコラム,2012/11/7閲覧
  3. ^ a b OPS”. Baseball LAB (2010年12月15日). 2013年3月11日閲覧。
  4. ^ “ブラウン作戦”OPS重視打線で勝負!,スポーツニッポン,2010/03/14閲覧
  5. ^ 西武GGが大トリ更改、OPS出来高導入,ニッカンスポーツ,2010/03/14閲覧
  6. ^ 2013 Major League Baseball Standard Batting
  7. ^ 2013 American League Standard Batting
  8. ^ 2013 National League Standard Batting
  9. ^ Prospectus Q&A”. Baseball Prospectus (2007年3月11日). 2013年12月17日閲覧。
  10. ^ James, Bill. The 96 Families of Hitters. The Bill James Gold Mine, 2009, p.24.
  11. ^ Linear Weights”. FanGraphs. 2013年7月2日閲覧。
  12. ^ OPS and OPS+”. FanGraphs. 2013年7月2日閲覧。
  13. ^ wOBA”. FanGraphs. 2013年7月2日閲覧。
  14. ^ OPS and OPS+ FanGraphs.
  15. ^ 宇佐美徹也「プロ野球記録大鑑」および各年発行の「ベースボールレコードブック」の個人記録欄より機械的に算出
  16. ^ パークファクター補正はされていない。
  17. ^ 通算記録 (MLB) - Baseball-Reference.com
  18. ^ Career Leaders & Records for Adjusted OPS+”. Baseball-Reference.com. 2018年10月5日閲覧。
  19. ^ Single-Season Leaders & Records for On-Base Plus Slugging”. Baseball-Reference.com. 2018年10月5日閲覧。
  20. ^ Single-Season Leaders & Records for Adjusted OPS+”. Baseball-Reference.com. 2018年10月5日閲覧。

関連項目[編集]