Ontheroofs

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Ontheroofs(オン・ザ・ルーフス)は、ウクライナのヴィタリー・ラスカロフ(Vitaliy Raskalov)とロシアのヴァディム・マコロフ(Vadim Makhorov)による[† 1]2人組のフリークライミングチーム[1][2]および写真家集団[a 2]。世界有数の高層建築物やランドマークを命綱・ハーネス無しで登っており[a 3]、非常に高い場所で撮影を行うスカイ・ウォーキングの先駆者である[3]

略歴[編集]

2人が出会ったサンクトペテルブルグのボリショイ・オブホフスキー橋

ラスカロフは2010年から建築物のフリークライミングをモスクワで開始する[a 4]。同年サンクトペテルブルグのボリショイ・オブホフスキー橋英語版を登っている最中に偶然出会ったことをきっかけに、マコロフと知り合う[a 3][a 5]。その後サグラダ・ファミリア(スペイン・バルセロナ)、ケルン大聖堂(ドイツ)、エッフェル塔ノートルダム大聖堂(フランス・パリ)、ギザの大ピラミッド(エジプト)をはじめとする世界有数のランドマークや橋・高層建築物において安全具を伴わない状態でのクライミングを行い[† 2][a 3]、独特な角度から街の様子を撮影し、インターネット上に公開する活動を行っている[a 5][a 7][a 8]

2016年1月時点における建設途中の第2ロッテワールドタワー

2014年にはラスカロフとマコロフが当時世界で2番目に高い建築物である未完成の上海中心(高さ650メートル)の登頂を行ったことで[1][a 3]、彼らは国際的な知名度を高めた[a 7]。ラスカロフらは登頂の6ヶ月間前から計画を練り始め、建設業者が不在で警備が手薄となる春節にタワーの建設現場に侵入した[a 4]。これを受けて中国当局はラスカロフらに対し20年間に渡る再入国禁止を通告したが、偽名で活動していた彼らはその1年後には法の目をかいくぐり建設途中の平安国際金融中心(深圳市)の登頂に成功した[a 3][a 4]。また2014年に中国網絡中心英語版(香港)に登頂した際、ラスカロフらは最上部に設置されたLEDモニタを乗っ取り「What's up Hong Kong?」の文字列[† 3]や上海中心登頂時の動画を映し出すビルボード・ハッキング英語版を実行した[a 6]。2016年4月には韓国で最も高い第2ロッテワールドタワー(ソウル、高さ555メートル)への登頂を行った[a 9][a 10]。建設現場には警備犬や警備員、監視用ドローンが配置されていたにもかかわらず、それらの監視を振り切って建設中のタワー登頂を果たした[4][a 9]

反響[編集]

ラスカロフらが捕捉されたルースキー島連絡橋

2012年にラスカロフが3人組でルースキー島連絡橋を登頂した際、不法侵入のため捕捉され罰金を科せられたことで彼らの活動がメディアに取り上げられた[a 11][a 12][a 13][a 14]。2013年3月にはギザの大ピラミッドに登って立入禁止区域で撮影を行ったことによりメディアの注目を集め始め[a 15]、ラスカロフらを妬む者や畏れる者、怒りをあらわにする者、古代建造物の保存に関して懸念する者など様々な反響があり、これを受けてラスカロフはCNNに宛てたメールの中で謝罪している[a 16]。彼らのように危険な高さの建造物を登り、そこからの撮影を行う行為はスカイ・ウォーキングと呼ばれ、同時期にロシアの若者を発祥として人気が高まった背景があり[5][a 13][a 14][a 17]、ラスカロフとマコロフの2人はその先駆者として位置づけられている[3]

ラスカロフらが2014年の春節に登頂した上海中心(写真中央、同年3月時点における建設途中の様子)

上海中心に登頂した際の様子はYouTubeにアップロードされ、その翌日(2014年2月13日)には130万回再生および8000コメントに及ぶ反響があり[a 18]、模倣する中国人も現れた[a 19]。2016年4月時点では5200万回の再生数を記録している[2]。彼らの行動により、のちにタワーの管理者は同様のパフォーマンスを避けるために、壁の周囲にワイヤーのフェンスを設けるなどの対策を施す方針を示した[a 18]

また、第2ロッテワールドタワーの登頂を記録した動画はYouTube上で投稿された翌日に50万回再生されている[a 9]。事前に彼らの出入りを禁ずる張り紙を用意していたものの侵入を許す結果となり[a 20][a 21][a 22]、ロッテワールドタワーの代表者は「ラスカロフは外壁を登るという最もばかげた方法で登頂を行うため、彼の不法侵入を防げることは難しい」とのちにコメントを残している[4][a 21]。また、彼らの行為は多くの韓国人に手厳しく非難され、Instagramではラスカロフを周りの無実な人々の安全を脅かすという意味で「非武装のIS兵士」と揶揄したり、「彼は外国で厄介者になっている」・「安全は建設現場において最大限の原則である。彼はこんなこと[† 4]を安全具無しで行うなんて考え無しだ」・「彼の趣味が他人にとっては有害であることに気付いて欲しい」と書き込んだりするユーザが現れた[a 23][a 24]

プロモーション活動への協力[編集]

『ファイナルファンタジー覚醒』のプロモーションで登頂を行った華潤グループ本部ビル(写真は2016年11月における建設途中の様子)
キヤノンのコマーシャル・ビデオにて登頂を行ったJW・マリオット・マーキス・ドバイ・ホテル

ラスカロフらは携帯電話事業者やカメラメーカーなどからスポンサーシップを受けて、クライミングを行うことがある[a 25]。2014年に中国網絡中心を登頂した際の様子を記録した動画は、香港に本社を置くビデオ撮影会社Wild Bearと共同でのバイラル・マーケティング目的で制作されたことが分かっている[6]。ラスカロフらが近隣ビルの屋上を借りて空撮を行ったことを明かしているが、PRスタントゆえに本作品の信憑性を疑問視する声もある[6]。2015年には彼らが当時世界で最も高いホテルであるJW・マリオット・マーキス・ドバイ・ホテル(高さ355メートル)に登頂する様子がキヤノンのコマーシャル・ビデオとしてリリースされ、広告塔の役割を担っている[7]。このビデオ・クリップについてウェストミンスター大学の建築学者Davide Deriuは「ルーフ・トッピングが超越した場所での行為から、正常な、そしていよいよ商品化された出来事へと急速に転換したことの表れだ」とした[7]。ここでルーフ・トッピングとは「眺めを見るために建物の屋上へ到達することを追求する」行為と定義されている[8][9]。2017年には10月11日にスマートフォン向けゲーム『ファイナルファンタジー覚醒英語版』が韓国でリリースされるのに先立ち、配信元のFL Mobile Koreaと共同で企画して、中国・深圳市の華潤グループ本部ビル英語版(高さ392メートル)にてラスカロフらが登頂を行う最中にゲームをプレイする動画をリリースしている[a 26]

批評[編集]

ビルボード・ハッキングが行われた中国網絡中心と屋上に設置されたLEDモニタ

ウエストミンスター大学の建築学者Davide Deriuは上海中心で「人目を盗んで行った登頂を誇示したビデオや写真がリリースされるとオンライン上で小さな騒動が起こった」とし、「頂上でデジタルレフカメラで撮影した写真に加え、登頂時の危険な探索を行う様子を記録したビデオによって、彼らの探索は映画のような功績として受け入れられた」としている[10]

中国網絡中心の動画に関して、シドニー大学の文化地理学者Bradley L. Garrettはビデオの最後で彼らがビルボード・ハッキングを終えた後、覆面を被った男達が階段を駆け下り、吹き抜けで着替えてロビーの外へ静かに歩いていく様子は映画『ミッションインポッシブル』の1シーンのようだと言及している[2][a 27]ロンドン大学の犯罪学者Theo Kindynisは、「テンポの速いカットの連続・様々な角度からの撮影・低速度撮影された映像・都市の景観を空撮した襲い掛かるようなショット・プロレベルの編集技術」に着目し、「犯罪者が自分自身を撮影したものというより、制作費用に高額を投じたミュージックビデオのほうがより近しい作品」と表現した[11]。さらに登頂の様子を撮影するという考えのもとで全体の流れが綿密に企画されている点に関して「CCTVよりはMTVのよう」と例えた[6]。また本作品は彼らが登頂したことの証拠というよりは、LEDモニタを組み合わせたビデオ・パフォーマンスであると位置づけている[6]。加えてGarrettがこの撮影を「meta-selfie」(自撮りを超えたもの)と表現したことを引用し、Kindynisはこれには否定的な意図を含んでいるかもしれないが啓蒙的であると指摘し、現代の消費者文化において多くの人は独自性を生むような商品や経験を消費することを通して自己確立を行うことから、「犯罪と逸脱行為の中間にあるパフォーマンスは消費者が行うライフスタイル選択の中で特殊なタイプの1つに過ぎない」と考察している[6]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 日本語表記についてはCNN.co.jpによる報道を参照した[a 1]
  2. ^ 登頂を始めてから2014年10月までに、約50ヵ国の数千ヵ所に及ぶ建造物に登っている[a 6]
  3. ^ 日本語に訳出すると「やあ元気かい、香港」の意[a 2]
  4. ^ 訳注:ロッテワールドタワーの登頂

文献[編集]

  1. ^ a b Rosen 2015, p. 62.
  2. ^ a b c Kindynis 2016, p. 990.
  3. ^ a b Deriu 2016, p. 1044.
  4. ^ a b Paperboyo 2018, p. 36.
  5. ^ Deriu 2016, p. 1042.
  6. ^ a b c d e Kindynis 2016, p. 991.
  7. ^ a b Deriu 2016, p. 1046.
  8. ^ Garrett 2013, p. 270.
  9. ^ Deriu 2016, p. 1034.
  10. ^ Deriu 2016, p. 1045.
  11. ^ Kindynis 2016, pp. 990-991.

ニュース・特集記事[編集]

  1. ^ “ピラミッドに登ったロシア人写真家、今度は上海の摩天楼に”. CNN.co.jp. (2014年2月15日). オリジナル2018年9月24日時点によるアーカイブ。. http://archive.li/GZmmR 2018年9月24日閲覧。 
  2. ^ a b “ロシア写真家集団、今度は香港の高層ビルで掲示板乗っ取り”. CNN.co.jp. (2014年10月20日). オリジナル2018年9月24日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/kJc7K 2018年9月24日閲覧。 
  3. ^ a b c d e Jamie Fullerton and James Emanuel (2015年2月5日). “Fearless in the Far East: Daredevil climbers scale Hong Kong's 2,000ft skyscrapers and reveal their biggest fear isn't death - but surviving crippled”. Daily Mail (Associated Newspapers). オリジナル2018年9月8日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/SBvsb 2018年9月8日閲覧。 
  4. ^ a b c Ned Kelly (2014年2月17日). “We spoke to the Russian daredevils who climbed the Shanghai Tower”. URBANATOMY. オリジナル2014年6月20日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140620171305/http://online.thatsmags.com/post/we-spoke-to-the-russian-daredevils-who-climbed-the-shanghai-tower 2018年9月8日閲覧。 
  5. ^ a b Joanna Chiu (2014年2月22日). “Hong Kong as you've never seen it before: Daredevil duo scale city's highest buildings”. South China Morning Post. オリジナル2018年9月8日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/z1grF 2018年9月8日閲覧。 
  6. ^ a b Euan McKirdy (2014年10月19日). “On the Roofs climbers scale new heights”. CNN. オリジナル2018年9月9日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/Aq8BS 2018年9月24日閲覧。 
  7. ^ a b Ksenia Isaeva (2016年4月11日). “Globally famous ‘roofers’ conquer the world’s tallest buildings”. Russia Beyond. オリジナル2018年9月8日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/4D7Hz 2018年9月8日閲覧。 
  8. ^ Alex Kim (2014年2月21日). “The Story Behind That Insane Shanghai Tower Climb”. ハフポスト. オリジナル2018年9月8日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/VJ65c 2018年9月8日閲覧。 
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  10. ^ Lim Jeong-yeo (2016年4月12日). “[Interview] Vitaliy Raskalov on his Lotte World Tower climb”. The Korea Herald. オリジナル2018年9月8日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/LjCWG 2018年9月8日閲覧。 
  11. ^ “Daredevil Photographer Scales Vladivostok Bridges”. The Moscow Times. (2012年5月3日). オリジナル2018年9月8日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/xCwgd 2018年9月8日閲覧。 
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  23. ^ Lim Jeong-yeo (2016年3月28日). “Daredevils unwelcome in Korea”. The Korea Herald. オリジナル2016年3月30日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/NfNHO 2018年9月17日閲覧。 
  24. ^ Julian Ryall (2016年3月31日). “Daredevils evade security to climb 1,820-foot tower in South Korea”. The Telegraph. オリジナル2017年12月15日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20171215192251/https://www.telegraph.co.uk/news/2016/03/31/daredevils-evade-security-to-climb-1820-foot-tower-in-south-kore/ 2018年9月17日閲覧。 
  25. ^ Cian Traynor (2018年1月25日). “The daredevil climber risking his life for breathtaking views”. huck. オリジナル2018年9月24日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180924101559/https://www.huckmag.com/places/vitaliy-raskalov-interview-daredevil-rooftop-climber/ 2018年9月24日閲覧。 
  26. ^ 안슬기 기자 (2017年9月29日). “[뉴스] 'FINAL FANTASY AWAKENING' 일정 공개, 정식 서비스 시작은 10월 11일”. Inven. オリジナル2018年9月24日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/DipuH 2018年9月24日閲覧。 
  27. ^ Bradley L. Garrett (2015年2月17日). “Meet the rooftoppers: the urban outlaws who risk everything to summit our cities”. The Guardian. オリジナル2018年9月15日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/g0aSJ 2018年9月15日閲覧。 

参考文献[編集]

書籍[編集]

学術論文[編集]