SAP S/4HANA

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SAP S/4HANA(SAP Business Suite 4 SAP HANA、エスエイピー・エスフォーハナ)は、ドイツのソフトウェア企業SAP SE社のインメモリーデータベースSAP HANA」を標準プラットフォームとする同社の第4世代のERP製品である。[1]

概要[編集]

SAP S/4HANAはSAP SE社の主力製品であった「SAP R/3」および「SAP ERP」の後継製品として2015年2月に発表されたERP製品。[2] 財務会計管理会計、販売管理、人事管理などの様々なソフトウェアコンポーネントから成り立ち、それらコンポーネントが実装するビジネスプロセスは業界を横断したベストプラクティスを基に設計されている。[3][4][5]

最大の特徴は、これまでのERP製品が他社製を含む主要なデータベース管理システムを選択可能であったのに対し、SAP HANAを唯一のデータベースとしており、リアルタイムで最新の情報を参照できることをコンセプトとしている。[6] アプリケーションサーバーには従来のSAP ERPと同様にSAP NetWeaverを採用しており、アドオン等の開発にはSAP独自のオブジェクト指向プログラミング言語であるABAPがサポートされている。[4]

エディションはオンプレミス版とSaaS版である「SAP S/4HANA Cloud」の2形態がある。オンプレミス版は、サーバーベンダー各社が提供するアプライアンス上で利用できるほか、Amazon Web ServicesGoogle Cloud Platformなどのパブリッククラウド、SAPのプライベートクラウドサービスSAP HANA Enterprise Cloudやパートナー企業のクラウドサービス上で利用するマネージドクラウド上でも利用できる。[7] SaaS版であるSAP S/4HANA Cloudは2016年から日本国内でも利用できるようになっている。[8]

SAP共同創業者プラットナー氏は2016年5月の同社の年次イベントで、リリースからわずか1年間で3,200社がS/4HANAを採用し、同社史上最速のペースで採用が進んでいると発表した。[9][10] その後も採用企業数は増加し、2019年7月のプレスリリースでは11,500社に達したと発表された。[11]Google[12]や米Microsoft[13]、韓国食品大手ロッテ[14]、英エネルギー大手Centrica[12]が採用したほか、日本国内でも伊藤忠商事[15]NEC[16]ライオン[17]あすか製薬[18]村田製作所[19]が採用を決定するなど、国内外でシェアを伸ばしている。

特徴[編集]

インメモリーデータベース採用[編集]

データベースには同社のインメモリーデータベースであるSAP HANAを採用し、スループットが従来製品の3〜7倍に向上しており、これによってリアルタイムで経営情報を一元管理することを可能にした。[6] 又、データ量もカラムストア技による圧縮技術によって10分の1に低減されている。[6][20] テーブル設計は「ワンファクト・ワンプレース」のコンセプトに基づいており、重複データが一切排除されている。インメモリーデータベースを採用しているため、集計済みテーブルを保持する必要がなく、従来製品よりデータベースを占有する容量が抑制されている。[21]

機械学習・予測分析機能搭載[編集]

2017年9月に発表された新バージョン「SAP S/4HANA 1709」から機械学習機能を搭載。[22] 同社のIoTプラットフォーム「SAP Leonardo」の機械学習機能「SAP Leonardo Machine Learning」および予測分析機能を利用し、契約管理や商品の在庫消費予測、契約数量の消費の予測を行う機能が利用可能になっている。[22]

モバイル対応[編集]

同社のUI開発ツール「SAP Fiori」に対応しており、モバイル端末を含めたあらゆるデバイス向けに機能を提供可能である。[6][20]

RPA対応[編集]

2018年にはSAPがRPA分野へ参入し、S/4HANAに組み込むことが発表された。[23] 2018年現在はアーリーアダプターの顧客企業と実証実験を行っており、2019年には一般公開されるとしている。[23]

認定資格[編集]

同製品を取り扱うシステムエンジニアやITコンサルタントの知識を示すSAP認定コンサルタント制度が存在する。[24] 財務会計や管理会計、販売管理などの特定分野毎に資格体系が分かれており、アプリケーションコンサルタントやデベロップメントコンサルタントなどの種類がある。[24][25]

脚注[編集]

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  1. ^ SAPジャパン、第4世代の新ERP「SAP Business Suite 4 SAP HANA」発表
  2. ^ [速報]欧SAP、R/3後継となる次期ERP「SAP S/4HANA」発表。HANAインメモリデータベース専用に新規開発
  3. ^ FAQで理解しよう!SAP S/4HANA Financeの疑問にお答えします
  4. ^ a b 「HANAと全面統合」の意味するところは? SAPの新生ビジネススイート「S/4HANA」
  5. ^ SAP S/4HANA
  6. ^ a b c d SAPの新ERP「S/4HANA」、データベースはHANAのみ。HTML5ベースのUI、クラウドとオンプレ両対応
  7. ^ スピード経営時代、企業が選ぶべきクラウドERPは?
  8. ^ SAP、次世代ERPのSaaS版を国内投入、PaaSの活用でアドオンを分離
  9. ^ S/4 HANA導入は予想以上、マイグレーションに注力--SAPプラットナー氏
  10. ^ SAP ERPユーザはSAP S/4HANAをどう見ているか?
  11. ^ SAPの第2四半期決算、クラウドなど好調--貿易摩擦の影響も” (日本語). ZDNet Japan (2019年7月19日). 2019年7月22日閲覧。
  12. ^ a b SAPの「HANA」と「S/4HANA」、混同から普及への道筋
  13. ^ “MicrosoftとSAP、クラウドによるデジタル変革実現へ向けて協業” (英語). SAP Japan プレスルーム. (2017年12月1日). https://news.sap.com/japan/2017/12/01/microsoft%E3%81%A8sap%E3%80%81%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%89%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E5%A4%89%E9%9D%A9%E5%AE%9F%E7%8F%BE%E3%81%B8%E5%90%91%E3%81%91/ 2018年4月28日閲覧。 
  14. ^ ロッテが「SAP S/4HANA」を導入 デジタル変革を見据えた経営基盤整備へ
  15. ^ 伊藤忠商事、基幹系システム刷新へ 過去最大規模の開発費を投入
  16. ^ NEC、自社基幹システムを「SAP S/4HANA」で全面刷新 運用コスト25%削減へ
  17. ^ ライオン、新基幹系システムにSAP S/4HANAを採用” (日本語). IT Leaders. 2019年4月26日閲覧。
  18. ^ JSOL、あすか製薬株式会社向けに「SAP S/4HANA®1610」の導入支援を開始
  19. ^ 株式会社インプレス (2018年7月5日). “村田製作所、グローバル経理財務システムを「SAP S/4HANA」で構築 日本IBMが構築支援” (日本語). クラウド Watch. 2019年5月21日閲覧。
  20. ^ a b いよいよベールを脱いだ新ERP : SAP Business Suite 4 SAP HANA
  21. ^ 日経BPビジョナリー経営研究所編 『SAP 会社を、社会を、世界を変えるシンプル・イノベーター』日経BP (2014)
  22. ^ a b SAPジャパン、機械学習機能を追加した最新版ERPスイート「SAP S/4HANA 1709」を発表
  23. ^ a b SAPもいよいよRPA市場に参入、競合に対する強みとは?” (日本語). マイナビニュース (2018年11月2日). 2019年6月5日閲覧。
  24. ^ a b 最新資格取得パス - SAP Certified Application Consultant
  25. ^ 最新資格取得パス - SAP Certified Development Consultant

関連項目[編集]