SFPトランシーバ

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SFPトランシーバは、一対の光ファイバーケーブルに接続できる

SFPトランシーバ(small form-factor pluggable transceiver)は、電気信号と光信号を相互に変換する光モジュール英語版(光トランシーバ)の一種である。小型で活線挿抜が可能であり、電気通信データ転送に使用される。

SFPのフォームファクタや電気的インタフェースは、スモールフォームファクタ委員会英語版の後援の下に、マルチソースアグリーメント(MSA、メーカー間による規格合意)によって規定されている[1]。SFPは、多くのネットワークコンポーネントベンダーによって共同開発されサポートされている一般的な業界フォーマットである。

ネットワーク機器英語版のSFPインターフェイスは、光ファイバケーブル(場合によっては銅ケーブル)を接続するための、可変の媒体固有のトランシーバ用のモジュラ(プラグアンドプレイ)スロットである[2]。SFPトランシーバは、SONETギガビット・イーサネットファイバーチャネルやその他の通信規格に対応している。 SFPはサイズが小さいため、ほとんどの機器でGigabit interface converter英語版(GBIC)を置き換えた。そのため、一部のベンダではMini-GBICと呼んでいる[3]が、この名称はMSAで正式に定義されたものではない。

種類[編集]

SFPトランシーバには様々な送信機・受信機の仕様があり、ユーザは各リンクに適切なトランシーバを選択して、使用可能な光ファイバタイプ(マルチモード光ファイバー英語版シングルモード光ファイバー英語版など)で必要な光到達範囲を提供できる。トランシーバはその伝送速度も指定される。SFPモジュールは一般的にいくつかの異なるカテゴリに分類される。

1Gbit/s SFP[編集]

  • 1Gbit/sマルチモード光ファイバー、LCコネクタ、レバー色は黒またはベージュ[1]
    • SX - 波長850nm、最大到達距離550m、伝送速度1.25Gbit/s(ギガビット・イーサネット)。最大到達距離を短くして伝送速度を高くしたものもある[4]
  • 1.25Gbit/sマルチモード光ファイバー、LCコネクタ、レバー色は規定なし
    • SX+/MX/LSX(名称はメーカーにより異なる) - 波長1310nm、最大到達距離2km[5]。SXや100BASE-FXとは互換性がない。LXをベースにしているが、LXをマルチモードに適応させるために一般的に使用されているモード調整ケーブルではなく、標準のマルチモードパッチケーブルを使用してマルチモードファイバで動作するように設計されている。
  • 1-2.5Gbit/sシングルモード光ファイバー、LCコネクタ、レバー色は青[1]
    • LX - 波長1310nm、最大到達距離10km(当初はLXは5km、LX10は10km)
    • EX - 波長1310nm、最大到達距離40km[6]
    • ZX - 波長1550nm、最大到達距離80km(ファイバーパス損失に依存)、レバー色は緑(GLC-ZX-SM1を参照)[6]
    • EZX - 波長1550nm、最大到達距離160km(ファイバーパス損失に依存)[6]
    • BX(正式にはBX10) - 波長1490nm/1310nm、シングルファイバー双方向ギガビットSFPトランシーバ。アップリンクとダウンリンク用にそれぞれBX-UBX-Dとしてペアで使用し、最大到達距離は10km[7][8]。一方向に1550nmを使用するバリエーションも製造されており、最大到達距離が80kmの高送信電力バージョンもある。
    • 1550nm 40km (XD), 80km (ZX), 120km (EX or EZX)
    • SFSW - シングルファイバー単波長トランシーバ(Single Fiber Single Wavelength transceiver)。単一ファイバ上の双方向トラフィック用。CWDMと組み合わせると、ファイバリンクのトラフィック密度を2倍する[9][10]
    • CWDMDWDMトランシーバは、様々な最大到達距離、様々な波長で用いられる。CWDM・DWDMトランシーバは、通常、40km、80km、120kmの到達距離に対応する。
  • 1Gbit/sツイストペアケーブル8P8C)、RJ-45コネクタ
    • 1000BASE-T - このモジュールは物理符号化副層英語版[11]のための重要なインタフェース回路を組み込んでおり、特定の伝送路符号によるギガビット・イーサネットのためにだけ使用することができる。ファイバーチャネルやSONETとは互換性がなく、また、それに相当するものでもない。ほとんどのルータやスイッチに統合されている(SFPではない)銅製1000BASE-Tポートとは異なり、1000BASE-T SFPは通常100BASE-TXの速度では動作できない。
  • 100Mbit/s、銅線・光 - 一部のベンダは、家庭向けの100Mbit/sに制限されたSFPを製造しており、従来の100BASE-FX回路の代わりに使用することができる。これは比較的まれであり、1Gbit/s SFPと簡単に混同される可能性がある[12]

10Gbit/s SFP+[編集]

SFP+(enhanced small form-factor pluggable)は、SFPの拡張バージョンで、最大16Gbit/sの転送レートに対応する。SFP+の最初の仕様は2006年5月9日に公開され、バージョン4.1は2009年7月6日に公開された[13]。SFP+は、8Gbpsのファイバーチャネル10ギガビット・イーサネット、および光伝送ネットワーク英語版の標準OTU2に対応している。これは、多くのネットワーク機器メーカーが対応している一般的な業界フォーマットである。SFP+規格には、16Gbit/sファイバーチャネルの記載が含まれていないが、この速度で使用できる[14][注釈 1]

SFP+では、専用のトランシーバを使用せずに2つのSFP+ポートを接続するためのダイレクトアタッチも導入されている。ダイレクトアタッチケーブル(DAC)には、パッシブ(最大7m)、アクティブ(最大15m)、およびアクティブオプティカル(AOC、最大100m)がある。

10Gbit/s SFP+モジュールは、通常のSFPと全く同じサイズであるため、機器メーカーは24ポート・48ポートスイッチやモジュララインカード英語版用の既存の物理設計を再利用できる。XENPAK英語版XFPモジュール英語版と比較して、SFP+モジュールは、モジュール内ではなくホストボード上に実装される回路を多く残す[15]。アクティブな電子アダプタを使用することにより、SFP+モジュールはXENPAKポート[16]やX2ポート[17]を備えた古い機器で使用できる。

SFP+モジュールは、制限タイプまたは線形タイプとして記述される。これは搭載された電子機器の機能性を記述する。SFP+モジュールの制限には、(劣化した)受信信号を整形するための信号増幅器が含まれているが、線形のものではない。線形モジュールは主に10GBASE-LRMなどの低帯域幅規格で使用され、それ以外は制限モジュールが好ましい[18]

25Gbit/s SFP28[編集]

SFP28は、通常25Gbit/sのデータレーン4本で実装される100ギガビット・イーサネットインターフェイスから発展した25Gbit/sインターフェイスである。SFPやSFP+と機械的寸法は同じだが、SFP28は1つの28Gbit/sレーンを実装し[19]、エンコードオーバーヘッドを含めて25Gbit/sのデータを収容する[20]

SFP28モジュールは、シングルモード[21]またはマルチモードの光ファイバ接続、アクティブ光ケーブル[22]、および直接接続銅線[23][24]に対応している。

cSFP[編集]

cSFP(compact small form-factor pluggable)は、ポートごとに2つの独立した双方向チャネルを可能にする、SFPと同じフォームファクタを持つSFPのバージョンである。これは主にポート密度を高め、ポートあたりのファイバ使用量を減らすために使用される[25][26]

SFP-DD[編集]

SFP-DD(small form-factor pluggable double density)は、ポート密度を2倍にするための新しい標準である。SFD-DD MSAのWebサイトによると、「SFP-DDに基づくネットワーク機器は、従来のSFPモジュールとケーブル、そして新しい倍密度の製品に対応する。」[27]

互換性[編集]

多くのメーカーは、ベンダーIDで識別して、同じブランドの純正のSFPモジュールのみを受け入れるようにデバイスを制限している。純正モジュールと互換モジュール(サードパーティー製モジュール)にとの間には時々大きな価格差があるため、適切なベンダーIDを表示するようにプログラムされたEEPROMを備えた互換モジュールは大きな需要がある。

標準SFPモジュールを受け入れることができるSFP+スロットを設計することは可能である。一部のルータやスイッチングハブでは、100BASE-LX SFPなど、より低いギガビット・イーサネット SFPで10Gbit/s SFP+スロットを使用できる[28][29]

利用[編集]

SFPスロットを2つ(左下)備えたイーサネットスイッチ

SFPソケットは、スイッチングハブルータファイアウォールネットワークカードについている。ストレージインタフェースカード(HBAやファイバチャネルストレージスイッチと呼ばれる)もこれらのモジュールを使用し、2Gb、4Gb、8Gbなどの様々な速度に対応する。SFPは、低コスト、低プロファイル、および様々なタイプの光ファイバーへの接続を提供することから、このような機器の柔軟性を高める。

標準化[編集]

SFPトランシーバは公式の標準化団体では標準化されていないが、競合するメーカー間のマルチソースアグリーメント(MSA)によって規格化されている。SFPはGBICインタフェースを基に設計されており、GBICよりも高いポート密度 (マザーボードの端に沿ったcmあたりのトランシーバ数)を可能にしているため、SFPはmini-GBICとも呼ばれている。

ただし、実際問題として、一部のネットワーク機器メーカーは、デバイスのファームウェアに純正モジュールのみで有効になるベンダー独自のチェックを追加して、サードパーティ製モジュールを使えないようにするベンダーロックインを起こしている[30]。サードパーティのSFPメーカーは、ベンダーIDを書き換え可能な空のEEPROMを備えたSFPを発表した[31]

信号[編集]

LCコネクタを内蔵したSFPモジュールを正面から見た図。レバー色が青色なのは、モジュールがシングルモード光ファイバ用に設計されていることを示す。
OC-3 SFPの内部。上部の金属製キャニスターは送信用レーザーダイオード、下部のプラスチック製キャニスターは受信用フォトダイオードである。

SFPの前面には、2つのLCコネクタが付いている。1つは送信用、もう1つは受信用である。

SFPトランシーバにはプリント基板が含まれ、ホストシステムのSFP電気コネクタと繋がっている。

SFPの電気的入出力[1]
ピン 名称 機能
1 VeeT 送信機の接地
2 TxFault 送信機障害表示
3 TxDisable ハイのとき、光出力は使用不可
4 MOD-DEF(2) シリアルIDインタフェースのデータ
5 MOD-DEF(1) シリアルIDインタフェース用クロック
6 MOD-DEF(0) モジュールによって接地され、モジュールが存在していることを示す
7 RateSelect 帯域幅の選択
8 LOS ハイのとき、受信光電力が受信機感度を下回っていることを示す
9 VeeR 受信機の接地
10 VeeR 受信機の接地
11 VeeR 受信機の接地
12 RD- 受信データの逆相
13 RD+ 受信データ
14 VeeR 受信機の接地
15 VccR 受信機の給電 (3.3V, max. 300mA)
16 VccT 送信機の給電 (3.3V, max. 300mA)
17 VeeT 送信機の接地
18 TD+ 送信データ
19 TD- 送信データの逆相
20 VeeT 送信機の接地

寸法[編集]

側面から見たSFPモジュール(長さは6cm)

SFPトランシーバーの物理的寸法は、XFPトランシーバ英語版よりもわずかに小さい。

寸法
SFP[1] XFP[32]
高さ 8.5mm 8.5mm
13.4mm 18.35mm
奥行き 56.5mm 78.0mm

公式の仕様書には記載されていないが、元のSFP規格の最大データレートは5Gbit/sである[33]

EEPROM情報[編集]

SFPのMSAでは、EEPROM上の256バイトのメモリマップを定義し、8ビットアドレス1010000X(A0h)のI²Cインタフェースを介してアクセス可能な、トランシーバの機能、標準インタフェース、製造元やその他の情報を記述する

デジタル診断監視[編集]

最新の光SFPトランシーバは、標準のデジタル診断監視(DDM)機能に対応している[34]。この機能は、デジタル光監視(DOM: digital optical monitoring)とも呼ばれる。この機能を備えたモジュールによって、エンドユーザーは、光出力電力、光入力電力、温度、レーザーバイアス電流、トランシーバの電源電圧などのSFPのパラメータをリアルタイムで監視できる。この機能は通常、SNMPを介してルータ、スイッチ、光伝送装置を監視するために実装されている。

関連項目[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 8Gbit/sと16Gbit/sのファイバチャネルの転送レート以外の主な違いは符号化方法である。16Gbit/sで使用される64b/66b英語版は、8Gbit/sに使用される8b/10bよりも効率的な符号化メカニズムであり、回線を2倍にすることなく転送レートを2倍にする。その結果、16Gbit/sファイバーチャネルでは14.025Gbit/sの伝送路レートが得られる。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e SFF Committee (2001-05-01), INF-8074i Specification for SFP (Small Formfactor Pluggable) Transceiver, https://ta.snia.org/kws/public/download/617/INF-8074.PDF 2017年3月16日閲覧。 
  2. ^ SFP Definition from PC Magazine Encyclopedia” (英語). www.pcmag.com. 2018年5月10日閲覧。
  3. ^ Cisco MGBSX1 Gigabit SX Mini-GBIC SFP Transceiver”. 2018年3月25日閲覧。
  4. ^ Agilestar/Finisar FTLF8524P2BNV specification, http://agilestar.com/p/datasheets/FTLF8524P2BNV-AS.pdf 
  5. ^ PROLINE 1000BASE-SX EXT MMF SFP F/CISCO 1310NM 2KM - SFP-MX-CDW - Ethernet Transceivers”. CDW.com. 2017年1月2日閲覧。
  6. ^ a b c 1000BASE Gigabit Ethernet SFP Transceiver, Optcore, http://WWW.OPTCORE.NET/optcore/e_products/?big_id=1&small_id=15 2013年3月26日閲覧。 
  7. ^ Single Fiber Bidirectional SFP Transceiver, MRV, http://www.interlinkweb.com/systemics/assets/product_images/mrv/MRV-OP-SFPB_A4_HI-1.pdf 
  8. ^ Gigabit Bidirectional SFPs, Yamasaki Optical Technology, オリジナルのFebruary 3, 2010時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20100203202255/http://www.yamasakiot.com/products/gigabit-sfp-bidirectional 2010年6月16日閲覧。 
  9. ^ Single-fiber single-wavelength gigabit transceivers”. Lightwave. 2002年9月5日閲覧。
  10. ^ The principle of Single Wavelength BiDi Transceiver”. Gigalight. 2014年4月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月14日閲覧。
  11. ^ VSC8211 media converter/physical layer specification, http://www.vitesse.com/products/download.php?fid=295&number=VSC8211 
  12. ^ Fiberstore: 100 M SFPs”. 2019年2月14日閲覧。
  13. ^ SFF-8431 Specifications for Enhanced Small Form Factor Pluggable Module SFP+ Revision 4.1” (2009年7月6日). 2017年3月16日閲覧。
  14. ^ Tektronix (2013年11月). “Characterizing an SFP+ Transceiver at the 16G Fibre Channel Rate”. 2019年2月14日閲覧。
  15. ^ 10-Gigabit Ethernet camp eyes SFP+”. LightWave (2006年4月). 2019年2月14日閲覧。
  16. ^ SFP+ to XENPAK adapter”. 2019年2月14日閲覧。
  17. ^ 10GBASE X2 to SFP+ Converter”. 2019年2月14日閲覧。
  18. ^ Ryan Latchman and Bharat Tailor (2008年1月22日). “The road to SFP+: Examining module and system architectures”. Lightwave. 2011年7月26日閲覧。
  19. ^ Ethernet Summit SFP28 examples”. 2019年2月14日閲覧。
  20. ^ Cisco SFP28 product examples”. 2019年2月14日閲覧。
  21. ^ SFP28 LR 1310nm transceivers”. 2019年2月14日閲覧。
  22. ^ 25GbE SFP28 Active Optical Cable”. Mellanox. 2018年10月25日閲覧。
  23. ^ Intel Ethernet SFP28 Twinaxial Cables”. 2018年10月25日閲覧。
  24. ^ Cisco SFP28 direct attach cables”. 2019年2月14日閲覧。
  25. ^ Compact SFP, Compact SFF MSA group forms”. Lightwave (2008年2月20日). 2018年4月12日閲覧。
  26. ^ Introducing Compact Small Form-Factor Pluggable Module (Compact SFP)”. Cisco Systems. 2019年1月12日閲覧。
  27. ^ http://sfp-dd.com/
  28. ^ SFF-8432, Abstract, Page 1: "The mechanical dimensioning allows backwards compatibility between IPF modules plugged into most SFP cages which have been implemented to SFF-8074i. It is anticipated that when the application requires it, manufacturers will be able to supply cages that accept SFP style modules. In both cases the EMI leakage is expected to be similar to that when SFP modules and cages are mated."
  29. ^ SFF-8431, Chapter 2 Low Speed Electrical and Power Specifications, 2.1 Introduction, Page 4: "The SFP+ low speed electrical interface has several enhancements over the classic SFP interface (INF-8074i), but the SFP+ host can be designed to also support most legacy SFP modules."
  30. ^ John Gilmore. “Gigabit Ethernet fiber SFP slots and lock-in”. 2010年12月21日閲覧。
  31. ^ Reprogrammable SFPs”. www.google.com. 2019年2月14日閲覧。
  32. ^ INF-8077i: 10 Gigabit Small Form Factor Pluggable Module”. Small Form Factor Committee (2005年8月31日). 2017年3月16日閲覧。
  33. ^ FAQs for SFP+”. The Siemon Company (2010年8月20日). 2016年2月22日閲覧。
  34. ^ SFF-8472, (21 November 2014), https://ta.snia.org/kws/public/download/294/SFF-8472.PDF 2017年3月16日閲覧。