SOMPO美術館
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![]() Sompo Museum of Art | |
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施設情報 | |
前身 | 東郷青児美術館→安田火災東郷青児美術館→損保ジャパン東郷青児美術館→東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 |
専門分野 | 美術館 |
収蔵作品数 | 約630点(2016年時点) |
館長 | 中島隆太 |
事業主体 | 損害保険ジャパン |
管理運営 | 公益財団法人SOMPO美術財団 |
建物設計 | 大成建設一級建築事務所[1] |
延床面積 | 3955.65㎡[1] |
開館 | 1976年 |
所在地 |
〒160-8338 東京都新宿区西新宿 1丁目26番1号 損保ジャパン本社ビル敷地内 |
外部リンク | SOMPO美術館 |
プロジェクト:GLAM |
SOMPO美術館(そんぽびじゅつかん)は、東京都新宿区にある東郷青児の美術作品コレクションを中心とする美術館。公益財団法人SOMPO美術財団が運営している。
概要[編集]
安田火災海上保険(現:損害保険ジャパン)の前身会社時代からその作品をパンフレットやカレンダーに用い、支援するなど縁の深い東郷青児の協力の下、西新宿に本社ビルを新築する際に美術館設置構想が持ち上がり、 自作200点やコレクションを提供を受け、1976年6月、運営法人である財団法人安田火災美術財団(現:公益財団法人SOMPO美術財団)を設立し、翌月、開業した安田火災海上本社ビル(現:損保ジャパン本社ビル)の42階に東郷青児美術館として開館[2]。2020年7月、本社敷地内に別棟を新築して移転オープンした(下記参照)[3]。
東郷を初めとする現代日本人洋画家のコレクションが中心であるが、企画展ではポップアートを取り上げるなどの幅の広さがある。また、運営主体の公益財団法人が美術家育成の目的を持つことから、若手画家の展覧会や表彰企画が盛んである。しかし、2002年に第25回安田火災東郷青児美術館大賞を付与された和田義彦については、その受賞作品が盗作の疑いがあるとして受賞は取り消されている。
1987年から展示の所蔵作品で最も著名であろうゴッホの「ひまわり」は、約53億円で落札したことから注目を集めた[3]。落札当初、欧米の美術界を中心に「贋作ではないか」という説が広がったが、これはゴッホ美術館の学芸員によって否定されている。2003年には、ゴッホが意図していたという2つの「ひまわり」と「ルーラン夫人ゆりかごを揺らす女」を並べるという企画展が催され、シカゴ美術館が所蔵する『ルーラン夫人』とゴッホ美術館が所蔵する『ひまわり』の貸し出しを受け、当館所蔵の「ひまわり」と組み合わせた展示が行われた。
美術館の移転[編集]
美術館があった本社ビル内の施設(延床面積約1900平方メートル)ではすべての所蔵作品の常設展示が困難であり、ビル内にあることで搬入エレベーターを大きくできないなど、設備上の問題もあった[3]。そうしたことから、2017年2月に美術館はビル敷地内に新たに地上6階・地下1階の美術館施設(延床面積約4000平方メートル)を建設すると発表した。この移転準備のため、2019年9月30日から翌年2月14日まで長期休館することになり[4]、2019年7月30日、新しい美術館は「SOMPO美術館」に名称を変更すると発表した[5]。
2020年2月15日から移転前最後の展覧会となる「FACE展 2020」(損保ジャパン日本興亜美術賞展)が開催された。同年3月15日まで開催される予定であったが、COVID-19の感染予防・拡散防止のため同年3月3日から臨時休館となり3月2日は休館日であることから、展覧会終了日は3月1日となり[6]、休館中の2020年4月1日付で名称変更した[7]。
新美術館は2020年5月28日の開館予定であったが[5]、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の状況及び、政府・自治体からの要請を踏まえて、緊急事態宣言期間(東京都は4月7日から5月25日まで)中の同年5月11日に開館延期を発表[8]、緊急事態宣言解除後の同年7月10日にようやく開館した[9]。
建物は1 - 2階がカフェやミュージアムショップ、エントランスホールで、3 - 5階が展示スペース、6階が事務所および応接室という構成となり、設計は大成建設一級建築事務所、施工は大成・清水・鴻池が担った[1][10][11][12]。設計にあたっては、建物をひとつのアートと捉え、新宿の文化・芸術のランドマークとなるような建築を目指し、収蔵品の中核をなす優美な女性像が人気を博した東郷の作品もヒントになり、外観や内装とも柔らかな曲線を描くデザインが採用された[13]。また正面玄関前には「ひまわり」を複製した陶板も設置された[3]。
沿革[編集]
- 1976年
- 1978年 - 東郷の死去により遺族から美術品345点を受領する[14]。
- 1987年
- 2002年7月1日 - 損害保険ジャパン発足に伴い、運営法人名を「財団法人損保ジャパン美術財団」、美術館名を「損保ジャパン東郷青児美術館」に変更。
- 2010年4月1日 - 公益財団法人への移行に伴い、運営法人名を「公益財団法人損保ジャパン美術財団」に変更。
- 2014年9月1日 - 損害保険ジャパン日本興亜発足に伴い、運営法人名を「公益財団法人損保ジャパン日本興亜美術財団」、美術館名を「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」に変更[15]。
- 2017年 - 東郷および長女たまみの著作権を取得[14]。
- 2020年
- 4月1日 - 美術館名を「SOMPO美術館」に名称変更。また、美術館名称変更に伴い、運営法人名を「公益財団法人SOMPO美術財団」に変更。
- 7月10日 - 損保ジャパン本社ビル隣接地に建設された新美術館へ移転開館[9]。
主な収蔵作品[編集]
- 東郷青児 『望郷』(1959年)
- フィンセント・ファン・ゴッホ 「ひまわり」(1888)[16]
- ポール・ゴーギャン「アリスカンの並木路、アルル」(1888)
- ポール・セザンヌ 「りんごとナプキン」(1879〜1880)
- ピエール=オーギュスト・ルノワール 「帽子の娘」(1910)
- グランマ・モーゼス 「古い格子縞の家」(1944)
その他約630点を所蔵(2016年4月)
登場する創造作品[編集]
映画[編集]
- 名探偵コナン 業火の向日葵 - ゴッホの『ひまわり』を怪盗キッドが盗むと予告した場所。本作品は当美術館及び経営会社が協力し、館長の原口秀夫は実名で登場している。
脚注[編集]
- ^ a b c 新建築 2020, p. 186.
- ^ 『ビル紳士録』p.146 - 147
- ^ a b c d 「SAMPO美術館 移転オープン ひまわりより身近に」『読売新聞』2020年7月30日
- ^ 「新美術館について(美術館公式サイト)
- ^ a b “2020年5月28日、「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」は、「SOMPO美術館」に生まれ変わります。”. 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 (2019年7月30日). 2020年2月29日閲覧。
- ^ “臨時休館のお知らせ(Notice of temporary closure of the museum)”. 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 (2020年2月28日). 2020年2月29日閲覧。
- ^ “2020年度の展覧会予定を更新しました。”. 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 (2019年9月3日). 2020年2月29日閲覧。
- ^ “「SOMPO美術館」の開館延期について” (PDF) (プレスリリース), 損害保険ジャパン株式会社, (2020年5月11日) 2020年5月11日閲覧。
- ^ a b “「開館記念展」開幕と会期変更のお知らせ” (PDF) (プレスリリース), SOMPO美術館, (2020年7月1日) 2020年7月1日閲覧。
- ^ “新美術館の建設について” (PDF) (プレスリリース), SOMPOホールディングス, (2017年3月30日) 2018年8月26日閲覧。
- ^ “損保ジャパン、美術館新設へ…20年開業目指す”. 読売新聞. (2017年2月18日) 2018年8月26日閲覧。
- ^ “損保ジャパン日本興亜/美術館建設(東京都新宿区)/設計は大成建設、17年4月着工”. 日刊建設工業新聞. (2016年12月15日) 2018年8月26日閲覧。
- ^ 「(建モノがたり) SOMPO美術館 東京都新宿区」『朝日新聞』夕刊 2020年9月1日
- ^ a b c d “REPORT 2019 (PDF)”. 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 (2020年3月). 2021年1月1日閲覧。
- ^ “名称変更のお知らせ” (PDF) (プレスリリース), 公益財団法人 損保ジャパン美術財団, (2013年9月6日) 2014年6月20日閲覧。
- ^ 当美術館蔵の『ひまわり』の制作時期については諸説あるが、2001年にゴッホ美術館の紀要に掲載された論文では制作時期を1888年11月下旬から12月上旬としている(Van Tilborgh, Louis & Hendriks, Ella: The Tokyo 'Sunflowers': a genuine repetition by Van Gogh or a Schuffenecker forgery?, Van Gogh Museum Journal 2001, pp. 16 - 43)(朝日新聞出版編・発行『ゴッホへの招待』、2016、p.7による。)当美術館の公式サイトも制作年を1888年としている。
参考文献[編集]
- 森喜則、今吉賢一『ビル紳士録』毎日新聞社、1992年。ISBN 4-62030885-4
- 公益財団法人損保ジャパン日本興亜美術財団編集 『コレクション100選』 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館、2016年4月
- 『新建築』新建築社、2020年9月。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
座標: 北緯35度41分33.8秒 東経139度41分46秒 / 北緯35.692722度 東経139.69611度