SY-1 (ミサイル)

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SY-1
SY-1 Missile 20170919.jpg
種類 対艦ミサイル
製造国 中華人民共和国の旗 中国
性能諸元
ミサイル直径 0.76m
ミサイル全長 7.36m
ミサイル翼幅 2.75m
ミサイル重量 2,998kg
弾頭 513kg
射程 95 km (51 nmi)
推進方式 液体燃料ロケット
誘導方式 中間:オートパイロット
終末:ARH
飛翔速度 M0.9
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SY-1中国語: 上游一号, 拼音: Shang-You-1)は、中国で開発された対艦ミサイルソビエト連邦製のP-15 テルミート(SS-N-2 スティックス)のライセンス生産版であり、西側諸国においては、アメリカ国防総省(DoD)識別番号としてはCSS-N-1NATOコードネームとしては「スクラブブラッシュ」(: Scrubbrush)と呼ばれた[1]

また、のちには、発展型としてHY-1中国語: 海鷹一号, 拼音: Hai-Ying-1; CSS-C-2 シルクワーム)やHY-2(CSS-C-3 シアサッカー; 輸出名はC-201)も開発されており、これらも本項で扱う。

来歴[編集]

中華人民共和国国防部では、1956年10月に第五研究院(現在の中國航天科工集團公司CASIC)を設置して、巡航ミサイルの技術開発を進めていた。1950年2月の中ソ友好同盟相互援助条約を受け、1957年には防衛技術協力条約(Sino-Soviet agreement on new technology for national defense)も締結された。1958年中国は、P-15 ミサイルおよびその製造設備をソ連から購入した。生産ラインは南昌飛機製造公司に設置され、アメリカ合衆国から亡命したロケット開発者の銭学森博士の指導のもと、2年後にはライセンス生産に着手した。これによって生産されたのがSY-1(上游-1)であり、1964年8月には工場の試験を通過した。1967年8月、ミサイルの量産が認可され、1960年代後半には中国人民解放軍に就役した[1]

中国独自の改良型であるHY-1(海鷹-1)も、1968年12月には試験に成功し、1974年から就役した。これはさらにHY-2に発展し、こちらは1980年代初頭から登場した[2]。また、SY-1も、射程延伸型のSY-1A(95km)を経て、1990年代には動力を固体燃料ロケットに変更したSY-2に発展した[1]

設計[編集]

中国人民革命軍事博物館に展示されている牽引式のHY-1地上発射機
中国人民革命軍事博物館に展示されているのHY-2

上記の通り、SY-1はソ連P-15ライセンス生産版であるため、設計はこれと同一のものとなっている。動力としては液体燃料ロケットエンジンが用いられていたが、SY-2では固体燃料ロケットモーターとされた。また、HY-4では、サステナーはターボジェットエンジンとされている[1]。巡航高度の調節は、SY-1では気圧高度計によって行われていたが、SY-1A以降では電波高度計に変更されてやや低空での巡航が可能となっており、例えばHY-2では100m、HY-2Gでは30-50mとされている[2]

派生型一覧[1]
本国名 DoD識別番号 NATOコードネーム 輸出名 プラットフォーム 射程
SY-1 CSS-N-1 スクラブブラッシュ FL-1 艦対艦 40km
HY-1 CSS-N-2 サフラワー 艦対艦
CSS-C-2 シルクワーム 地対艦
HY-2 CSS-N-3/CSS-C-3 シアサッカー C-201 艦対艦/地対艦 95km
SY-2 CSS-N-5 サボット FL-2 艦対艦 50km
HY-4 CSS-C-7 サッドサック C-201W 地対艦 135km

運用史[編集]

イラン・イラク戦争[編集]

イラン・イラク戦争で初めて実戦使用され、イランアメリカ合衆国の所有するタンカークウェートの施設などをシルクワームで攻撃し[3]イラクは中国から購入した爆撃機H-6YJ-6中国語版(C-601)空対艦ミサイルとシルクワームを組み合わせてイランのタンカーとバルカーを破壊し[4]、両国のタンカー戦争に利用された。

湾岸戦争[編集]

湾岸戦争中にイラク軍は2発のHY-2をアメリカ海軍の戦艦ミズーリを中心とする部隊に対して発射した。一発は海に落下したが、もう一発はイギリス海軍42型駆逐艦グロスターシーダート艦対空ミサイル2発によって迎撃された。これは、海上での戦闘において対空ミサイルによりミサイルの撃墜に成功した最初の例とされる[5]。この際、シルクワームに対抗するため発射したチャフを誤認したアメリカ海軍のミサイルフリゲートジャレットファランクスCIWSがミズーリを誤射する事故が起きた[6][7]。イギリス軍はウム・カスルのHY-2を回収してイギリス空軍博物館コスフォード館に展示した[8]

イラク戦争[編集]

イラク戦争ではイラク軍がクウェートに発射した[9]。また、国際連合の制裁下でありながら、イラクはシルクワームのジャイロスコープ(C601とC611)を使ってアルサムード2英語版と呼ばれる弾道ミサイルを開発していた[10]

採用国[編集]

HY-1とHY-2の採用国

登場作品[編集]

空母いぶき
牽引式地対艦ミサイル型の「飛龍2(フェイロンFL2)」が登場。与那国島を占領した中国軍が多数装備するが、囮役のこんごう型護衛艦ちょうかい」に向けて発射したことで位置がばれてしまい、F-35JBの爆撃を受けて破壊されてしまう。
戦艦少女R
鞍山級駆逐艦「長春」の初期装備として登場。

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d e Dennis M. Gormley, Andrew S. Erickson, and Jingdong Yuan (2014) (PDF). A Low-Visibility Force Multiplier: Assessing China’s Cruise Missile Ambitions. National Defense University Press. http://ndupress.ndu.edu/Portals/68/Documents/Books/force-multiplier.pdf. 
  2. ^ a b Norman Friedman (1997). The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998. Naval Institute Press. ISBN 9781557502681. http://books.google.co.jp/books?id=l-DzknmTgDUC. 
  3. ^ U.S. Flag Tanker Struck by Missile in Kuwaiti Waters; First Direct Raid. The New York Times. October 17, 1987.
  4. ^ Roblin, Sebastien (2016年12月18日). “China's H-6 Bomber: Everything You Want to Know about Beijing's 'B-52' Circling Taiwan”. ナショナル・インタレスト. 2016年12月18日閲覧。
  5. ^ Final trip for HMS Gloucester after Falklands’ duties and Saxon Warrior exercise”. MercoPress (2011年5月23日). 2012年1月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年7月28日閲覧。 “In 1997, Gloucester took part in Ocean Wave 97. A deployment of 8 months which saw her visit countries including Australia, New Zealand, Singapore and the UAE as well as taking part in Exercise Flying Fish as part of the FPDA (Five Powers Defence Agreement) She sailed as part of Task Group 327.01 along with the flagship Illustrious(en) and other ships such as Richmond(en) and support ships. Part of the role of the Task Force was to oversee the peaceful handover of Hong Kong to the Chinese. 11 January 2012”
  6. ^ "Tab-H Friendly-fire Incidents: I. Ship-to-Ship Incident". Office of the Special Assistant for Gulf War Illnesses. 13 December 2000.
  7. ^ Evans, Mark L. (16 January 2014). "Jarrett (FFG-33)". Dictionary of American Naval Fighting Ships. Navy Department, Naval History and Heritage Command.
  8. ^ [1]
  9. ^ Missile blast shakes Kuwait”. ガーディアン (2003年3月28日). 2019年7月28日閲覧。
  10. ^ [2]

関連項目[編集]